高校教育改革
政府の教育再生実行会議は 5月17日第一次答申をまとめたと言う報道です。この中でも注目されるのは、高校教育改革です。高校では、7割の生徒が普通科に在籍していますが、これは戦後新しい教育体制を作ったときから続いているということですから、時代遅れになっているのは明確です。普通科は、工業高校や農業高校といった職業養成以外の生徒の教育課程です。生徒の才能や能力は1人1人違い、生徒1人1人の才能や能力に応じた教育を施すのがベストですが、予算の問題もあり、いくつかの教育コースに絞るのはやむを得なかったと思います。しかし、現在大学進学を見れば、東大の合格者が私立中高一貫校で8割近くを占めており、これは学力の高い子供向けのコースです。従って、国の普通科主義は相当前から時代に適応していなかったことが分かります。それにいち早く気付いた私立学校が中学から高校まで6年間の一貫教育コースを設け、東大合格から逆算した教育プログラムを設けて成功しています。さらに高校野球やサッカー、ラグビーなどの全国選手権を見ると、強豪校は私立高校で占められており、私立高校が高校生の才能を引き出していることが分かります。私立は灘高校や開成高校など進学に特化した高校が中心でしたが、最近は大阪桐蔭高校や青森山田高校のように各種のスポーツ教育に力を入れながら、進学教育にも力を入れ、才能別クラス編成をしている高校も見られてきました。これが公立高校の普通科教育改革が目指す姿だと思われます。
今日の競争社会においては、親は子供が生き残って行けるように他所の子より少しでも優位に立てる教育を早くから受けさせようとします。そしてそれに答えて来たのが私立高校であり、今ではこれが私立中学校まで早まっています。そして最先頭では有名私立小学校入学競争になっています。
このように国が何もしなくとも社会では、よりよい教育を受けられる方向に変化します。ただし、これにはお金がかかるので裕福な家庭に限られることになります。多くの公立高校は国が定めた時代遅れの教育プログラムを実施し、富裕層の子供が教育で優位な立場に建てるのをアシストしています。
これが分かれば、国が教育を過度に縛れば教育格差が拡大することが分かります。国は最低限の教育すべき事項を定め、あとは各高校が生徒のニーズをくみ取り、柔軟に教育コースを設定できるようにする必要があります。
また、公立高校制度は、公務員である教員が担当することから、教員の能力に応じた処遇が出来ず、優秀な教員を確保することが困難です。その点私立であれば、教員の能力に応じた処遇ができ、優秀な教員を確保できます。例えば、東大合格者を輩出したい高校に、東大卒の教員が1人もいないのは問題です。私立なら東大卒なら初任給600万円で雇用し、30歳で1,000万円、40歳で2,000万円といった処遇も可能です。従って、今後の高校教育は、公立と私立で担当を分けるべきだと思われます。公立は最低限度の教育を受けられることを保証するための場とし、私立高校は、才能に応じた教育を実施する場とします。いずれも義務教育ですから、国がかかる費用の大部分を支出しますが、それでも私立高校で高くなる部分については、低所得の家計の子供に給付型奨学金を支給して対応します。
これらの改革は、富裕層のこれまでの優位性を奪うものとなりますが、実は富裕層の教育競争のステージは高校ではなく、中学校になっています。中高一貫校が増えていること、私立中学受験者が東京都では5割程度に達していることを見れば明らかです。本当は、小学校卒業段階で才能が明確になっている子供については、その才能を伸ばすための中学教育を受けさせる必要があります。サッカーや卓球、バレーボールなどのナショナルチーム強化策として小学校で発掘した子供をアカデミーに入れ、特別教育を行う制度が行われています。一般の中学教育でもこれと同じことができるようにする必要があります。これを担うのは公立中学校ではなく、私立中学校だと思います。もちろん中学校育は義務教育であり、私立中学校でかかる費用は国が支出することになります。
こういう点まで考えた教育改革が必要です。