消費税引上げ不況は間違いなく来る

前内閣参与で京都大学教授の藤井聡氏が最近の雑誌で「消費増税がリーマン危機『数十個分』の被害を招く」述べられています。「リーマン危機数個分」というのは言い過ぎの気がしましますが、間違ないく消費増税不況は来ると思います。支出が2%上げあれば家計は2%支出を抑制するのは辺り前です。これまで数年にわたり賃金引き上げのニュースがありましたが、あれは大企業のみと言ってよいと思います。中小企業はボーナスをはずむことはあってもベース賃金を上げるところは少ないはずです。そこまで将来に自信が持てないからです。そのため、全体の8月割の家計には賃上げの恩恵は及んでいないことになります。一方毎年消費財を中心に物価は賃金引上げ率を上回る率で引上げられており、昨年は実質賃金がマイナスとなりました。物価主導型の賃上げの場合、物価の上昇率以下の賃上げに留まるのは当たり前であり、当然の結果です。それでも好況感があったのは、金利低下効果により個人の借入金の支払利息が減り、可処分所得が増えたからです。この効果は、借金の割合が多い低所得層ほど大きいと考えられます。また低所得層の場合、支払利息減少分は手っ取り早く消費に回ります。従って、金利低下効果は直接的に消費に回っていたのです。しかし、金利低下効果も底を打っています。その結果、企業では損益上金利低下益を計上できなくなりましたし、個人でも実感できなくなっています。即ち、支出上昇を吸収できる余地が無くなっているのです。

そこに2%の消費税引上げですから、家計は支出を減らして対応するしかありません。それも消費税率が初めて10%という2桁に乗ったインパクトは大きいと考えられます。この金額を吸収するために先ずは4%近い節約を試みるはずです。従って、普通でも4~5%消費が落ち込むと予想した方がよいと思います。

政府はキャッシュレス決済に伴うポイント還元制度で消費の落ち込みをカバーできると言っていますが、2%支出が増えるのは間違いなく、家計は先ずは支出を減らす方向に走ると思われます。それにキャッシュレス化には手数料支払いが生じ、ポイント還元実施期間中は手数料が押さえられても、期間終了後は5%以上の手数料になることが確実視されており、利幅の小さい小売店は導入しないと考えられます。従って、キャッシュレス化はそんなに進まないと予想されます。実際、手数料が1%以下になる制度が出来上がってから参加した方が安全です。このようにキャッシュレス化に伴うポイント還元制度は消費の落ち込みをカバーする力はないと考えれます。それでもポイント制度が有効なうちに買い溜めしておこうという動きが起きるでしょうから、制度終了後の消費不況を深刻にする可能性があります。来年8月の東京オリンピックが終了したら、大きなイベントやそのための準備工事もなくなり、気分的にも実体的にも一挙に消費差し控えムードとなることが予想されます。そうなると消費が2桁落ち込むことがあっても不思議ではありません。藤井教授の警告は、こういう状態を指しているのなら、十分あり得ることだと思います。