ソフトバンクGに対する違和感
ソフトバンクグループ(G)は、2019年3月期に売上高9兆6,022億円、営業利益2兆3,539億円、純利益1兆4,546億円を上げ、世間を驚かせました。その前年の12月には、国内携帯電話事業子会社ソフトバンクのIPOにより市場から約2兆5,000億円を調達しています。しかし、ソフトバンクGの損益や行動には常に違和感が伴っています。2019年3月期決算についても、営業利益の内投資ファンドの未実現利益(評価益)が1兆132億円と43%を占めています。多分公表された営業利益のうち半分近く、かつ1兆円を超える金額が評価益という決算は日本史上初ではないかと思います。評価益は経済事情などによって変動する利益であり、トヨタの実現済みの営業利益2兆4,675億円とは全く異質のものです。事実この評価益に含まれる米国ウーバー社株式は、IPO後初値が公募売り出し価格の45ドルを下回る42ドルとなり、評価益の不安定さを証明しました。また、この評価益は、ソフトバンクGのファンドが高い株価で追加投資した結果生じた差益です。即ち、当該評価益はソフトバンクGが自ら作り出したものということが出来ます。この点で評価益の会計制度の妥当性に疑問を生じさせることとなっています。
昨年12月のIPOによる資金調達についても、環境的には菅官房長官の「携帯料金は4割引き下げ余地がある」発言により携帯電話事業は収益減少が予想されており、IPO株価1,500円は高すぎるとの声が支配的でした。それを付き合いが深い大手証券会社をほぼ全社幹事団にすることにより、強行しました。それも殆どが個人投資家向けです。IPO後案の定株価は1,200円台から1,400円台にあり、殆どの個人投資家が損害を被っています。ソフトバンクGはこのIPOで約2兆5,000億円、それからその後IPOしたソフトバンクが子会社化するヤフー・ジャパンの株式をソフトバンクGから買い取ることにより約6,000億円の資金を吸収した結果、約3兆円の資金を得たことになります。ソフトバックが支払った約6,000億円は携帯料金として日本の家計から得たものであり、ソフトバンクGは日本の家計から約3兆円を得たことになります。
このようにソフトバンクGの資金源は日本であり、日本の家計なのですが、ソフトバンクGは法人税を払わないことでも有名です。これまでの決算を見ると、営業利益段階までは巨額の利益を計上しても、営業外でそれを上回る巨額の損失を計上し、結局課税所得としては繰損失とし、法人税の支払いを逃れてきました。最近2018年3月期の決算について、国税は約4,000億円の損失計上を否認したということです。しかし、買収したアーム社株式のファンドへの譲渡に伴い約2兆円以上の損失が発生していたことから法人税非課税に変わりはないということです。ここでもファンドが損益操作に使われています。ソフトバンクの役員報酬は社外取締役の32億円を筆頭として巨額であることが知られており、法人税非課税というのは普通の常識からしたら奇異に感じられます。
ここで日本の国民が良く認識すべきは、ソフトバンクGの資金源は日本の家計であるということです。携帯電話事業で年間約6,000億円の余剰資金が生じるから、巨額の海外M&Aやファンドが組成出来ているのです。携帯電話事業でこれだけの資金が家計から流れ込まなければ、今のソフトバンクGはありません。ソフトバンクGの孫社長は日経の記者とのやり取りで、「織田信長が他の戦国武将と何が違っていたか分かりますか。それは資金が流れ込む仕組みを作ったことですよ」という趣旨のことを述べたということです。孫社長の言わんとすることは、「私は携帯電話事業で日本の家計からお金が流れ込む仕組みを作りました。いや監督官庁に作らせました。その点で信長の上を行っています。」ということだと思います。その通りで、ソフトバンクは、2006年ボーダーフォンから携帯電話事業を1兆7500億円で買収後、この巨額の借入金を返済するために、携帯大手3社の寡占体制を利用して、家計から巨額のお金が流れて来る仕組みを作り上げました。関東官庁である総務省と公正取引委員会がこれに手を貸したのです。
孫社長のこれらのやり方には、日本と言う国への愛着や日本の国民に対する愛情が全く感じられません。日本や日本国民は孫社長にとって単なる収奪対象のように見えます。
7月4日、日本が韓国に輸出規制を発動した日に孫社長は韓国で文大統領と会談すると共に、韓国企業の要人と会談しています。今後韓国に巨額の投資をするとの報道もありますし、既に昨年11月には韓国企業に約2,200億円の投資をしています。ソフトバンクGの韓国への投資は、日本の家計の資金が韓国に流出しているとも言えます。