理系学生のヘッドハンティングが始まる
最近NTTドコモやソニーで理系大卒入社の年収を700万円以上とできる人事制度が作られたと話題になっています。NTTドコモやソニーでも年収700万円といったら、今の人事制度では早くても入社10年の人の年収水準になると思います。一般的な大企業のメーカーで言ったら35歳くらいの年収です。それを大卒新人に出そうと言うのですから、人事制度が変革期に来ていることが分かります。
この制度により年収700万円以上で入社契約を結べるのは、NTTドコモやソニーでも年に1,2名くらいでしょう。それも明らかに優れた才能を持つことが大学時代の研究成果から分かる人材です。言うならば特別選抜による入社となると思います。それ以外の大部分の学生は今まで通り初任給20数万円から始まり、賃金テーブルを上がって行くことになります。年収700万円以上を約束されるのも最初の年だけで、その後は実績を評価して決めることになるはずです。そこでパッとしなければ、同期の一般大卒入社組の賃金水準に落とされると思いますし、本人がこんなはずではなかったと辞めるケースも多いと思います。
それでもNTTドコモやソニーのこの人事制度から分かることは、一握りの天才が技術を動かし、会社の将来を決める時代になってきたということです。歴史を見れば技術革新は1人の発明や開発から起きています。大勢の力が必要になるのは、大量生産や普及が必要になったときです。このことが日本でも企業内で認識されてきたということです。組織内平等が重視されてきた日本の企業では画期的な出来事と言えます。
今回のNTTドコモやソニーの人事制度改正は、採用面で大卒一括採用から通年採用に替ったことと関係があると思います。そうなればじっくり評価できるので、才能や能力を見極められることになります。その結果、この学生はこれくらい出して囲い込むべしと判断できることになります。プロ野球のスカウトが長い間選手を追い続け、他の選手と比較して、プロとして成功する可能性が高いと判断したら、契約金1億円出しても契約するのと少し似ています。学生の採用もプロ野球のドラフトに似てきたように思えます。そうなると、企業としてはこのような学生を早く見つけることが勝負となりますので、大学内にスカウトを張り巡らす企業が出て来ると考えられます。学会や実業界で評判が高い教授の研究室を中心に、学生の研究テーマを調べ上げ、その中で面白い成果を上げた学生を追いかけ、インターンに誘うなどして能力や人間性を評価し、早々に高給を約束し入社の約束を取り付けることが行われて来ます。学生はこのようにスカウトされて入社できるように自分の得意分野を見極め、研鑽を積むことが必要となります。
尚、このことは理系学生にのみあてはまることであり、文系学生は無縁だと思います。文系は社交性や対人関係処理能力が重視され、慶応や早稲田などの有名私大卒ならとりあえず採用しておけの時代が続くと思われます。これからは文理格差の時代です。