「皆様のNHK」が「皆様の敵NHK」になった
先月の参議院議員選挙で当選した「NHKから国民を守る党」(N国党)の立花議員が議員会館に入り、NHKと受信契約は結ぶが受信料は払わいと宣言し、論争を巻き起こしています。先ず反応したのは維新の会代表でもある松井大阪市長でした。7月30日に「NHKが国会議員の不払いを認めるのであれば大阪市も払わない。」と述べました。これに驚いたNHKはさっそくホームページ上に声明を発表しました。その声明でNHKは、「NHKを見なければ受信契約をしなくていい、受信料を払わなくてもよいと発言する人たちがおり、これに対しては放置することなく、厳しく対処していく」と述べています。即ち、立花議員が今後受信料は払わなくてよいと不払いを勧める発言をすれば裁判に訴える、立花議員が受信料を払わないようだったら、裁判で取り立てるということを言ってるものと思われます。
これを受けて翌7月31日には、同じ維新の会の吉村大阪府知事が松井大阪市長に同調する旨の発言をしました。そして翌日の8月1日には、国民民主党の玉木代表が「法律に定められている義務を果たさず、平気でいるのであれば、国民民主党も払いたくない」と述べました。維新の松井代表と国民民主党の玉木代表の発言には、内容に相当の差があります。松井代表の主張は、気に入らなくても現に法律があるのだから従うべきで、国会の中で法律改正に動くべき、ということです。実は、維新の会も先の参議院議員選挙の公約の中にNHK受信料制度の改革を上げていたのです。一方玉木氏は、「公平性の観点からきちんと払うのが筋だ。正直者がばかを見ない社会にしなければいけない」と述べており、あくまで現行受信制度維持派だと思われます。国民民主党は家計重視を掲げていますから、本来なら真っ先にNHK受信料改革を主張しなければならないのですが、NHK出身議員がいることから、言い出せないものと思えます。その点維新の会は、NHKの有力な後ろ盾議員がいるにも関わらず、NHK制度改革を公約に掲げているのは大したものと言えます。NHK制度改革積極派の足立議員らの声が強まっていることが伺えます。
N国党と維新の会は、NHK放送をスクランブル化すべきという点では主張は同一なのです。ただN国党の立花代表は、放送法と言う法律は確かにあるが、法に値しない、法は国民に取り公平なものでなければならないが、放送法は不公平不公正な内容となっており、法ではない、即ち守るべき法とは言えない、と考えているのです。法理的には正しいのですが、NHKや裁判所には通じない論理です。この点では維新の会の主張の方が現実的と言えます。立花代表は今後議員会館のテレビの受信料を払わないでしょうが、その場合1回でも滞納した時点でNHKは支払を求めて訴訟を提起することが考えらえます。訴訟費用を考えると全く割に合わないのですが、これを放置するとNHK擁護派の自民党などの議員や擁護派ではないけれどちゃんと支払うべきという維新の会が怒るため、このようなパフォーマンスが必要となるのです。
こうしてNHKと立花代表との受信料を巡る訴訟がテレビや新聞を賑あわせることとなります。その結果、受信料に不満を持っている人たちの反発は益々高まることになります。受信料不払世帯は受信対象世帯の約19%、約830万世帯ですが、これは全く払っていない世帯のことで、支払っている世帯約81%には、たまに払っている、即ち、欠かさず払っているわけではない世帯が多数含まれます。約81%の半分がこのたまに払っている世帯だと思われます。これから言えることは、受信料制度に不満を持っている世帯は全世帯の半数を超えるということです。即ち、大部分の世帯が受信料制度は不当であると思っているにも関わらず、NHK制度は維持されてきたのです。それは税より魅力的な収入手段としての受信料制度を手放したくないNHKが国会議員に日夜働きかけて、国会議員の大部分をNHK擁護派としたからです。各党にはNHK出身の国会議員が多いですし、国会議員の息子や娘、親類などをNHKに就職させるなどの便宜を受けているのです。このため、昭和25年制定の放送法が不磨の法典のような存在になって来たのです。
しかし、N国党の躍進により受信料不満者の声が日増しに増大し、議員の支持者からも届くようになっています。このままでは、次の総選挙でNHK擁護派の選挙区にN国党が刺客を立てれば落選の可能性が大きくなります。国会議員もこのままNHK擁護の姿勢を続ける訳にはいかなくなっています。もうNHKがどんなに「皆様のNHK」と言っても、全く視聴者には届きません。「皆様の敵NHK」になっています。今のまま放送を続けることは不可能です。