N国党の躍進は最高裁への不信任
先月7月21日に実施された参議院議員選挙で「NHKから国民を守る党」(N国党)が比例で約99万票(1.97%)を獲得し、1議席を確保しました。比例では得票率2%の政党要件は充たせませんでしたが、37選挙区に候補を擁立した選挙区で約152万票を獲得し、投票率3.02%で政党要件を充たしました。世の中まさかまさかの大騒ぎですが、そのトレンドは昨年初め辺りから見えていました。東京周辺の地方都市議会議員選挙で議席を獲得し始めていたからです。それまで地方議会議員選挙では地縁結縁がものを言い、NHK受信料(受信料)のような全国区のテーマを掲げて立候補してまず当選は考えられませんでした。それが徐々に当選者を増やしていたのです。これは、受信料の問題が有権者にとって我慢のならないものになってきたことを示していました。それまで有権者は、受信料は税金みたいなものと諦めていましたが、家計の収入は増えない中、税金や医療保険や年金掛け金などの引上げ、物価の上昇により家計が圧迫され、月2,230円(2か月分自動引き落とし)の受信料が重い負担になってきていたのです。そしてついにN国党への投票行動に走らせたのです。そういう中で、2017年12月、最高裁判所(最高裁)が受信料制度を定める放送法(64条)について判断を下すことになり、受信料に苦しむ家計は最高裁が違憲判決を下すことに期待しました。ところが、期待に反し全面合憲判決でした。この裁判は小法廷が扱っていたものを大法廷に回付されましたので、小法廷の裁判官は違憲と考えてのことと思われていましたが、その裁判官さえ合憲の判断でした。この裁判については、法務大臣が異例とも言える意見書を提出していましたから、法務省としても違憲判決が出ることを恐れていたものと思われます。放送法はそれくらい違憲の可能性が高い悪法でした。違憲の根拠としては、意志の尊厳という基本的人権に関わる権利を抑圧し受信契約を強制していること。これは結婚を申し込まれたら断れないということと同じですから、如何に不当か分かると思います。また、受信料が見る見ないに関わらず支払いを求められる理由として、受信料は公共放送を維持するための負担金だから説明していますが、それなら受信料の実体は税金ということですから、所得に応じて負担するのが公平なのです。それを受信契約に基づく支払いだからとして、所得に関係なく受信対象世帯一律の負担としています。その結果所得1,000万円の世帯にとってはなんのこともない負担(0.26%)が、所得200万円の世帯では重たい負担(1.33%)となっているのです。これは公平な負担とは言えず、違憲です。また、受信料は、生活保護世帯は免除になっていますが、実質的には生活保護を受けられる生活水準にありながら、生活保護を申請せず頑張っている世帯からも取り立てています。住民税非課税世帯からも取り立てているのです。これは健康で文化的な生活を営む権利を侵害するものです。NHKは約5,580億円もの現預金・有価証券を持ち、キャッシュフローを見れば年間1,000億円を超える現金を余らせている超富裕団体であるにも関わらず、です。
最近裁判所は、ワンセグ、カーナビ、テレビ設置済みのアパート、ホテル客室などからも受信料を取れるという判決を出していますが、これなど馬鹿げた判決です。受信料の実体は先ほど述べたように税金です。そして税金は、課税対象や税率について法律で定めなければならないとされています(租税法定主義)。しかし、受信料の場合は、法律をどんどん拡大解釈し、課税対象を拡大しています。またホテルの部屋の受信料については、全室契約すれば設置台数の半分について受信料を払えばよいとして実質税率も変更しています。一方では、放送法は値引きを認めていないとして、値引きの約束は無効としていることと矛盾した取扱いです。ホテルの部屋のテレビの受信料は宿泊客に転嫁されるので、宿泊者が宿泊分の受信料を支払うこととなります。ということは、NHKは宿泊者から受信料を二重に取るということになるのです。これらから分かることは、ともかく裁判所はNHKがやることを認める立場に立ち、そのための理屈を絞り出しているということです。およそ国民の立場に立つと言う意識がありませんし、まるでNHKの番犬です。このことが分かったことから、受信料に不満を持つ有権者は、最高裁へ期待することを止め、N国党に投票する行動に出たのです。従って、N国党への投票は最高裁への不信任でもあります。たかが152万票と思うことなかれ。N国党が連日テレビや新聞などで取り上げられることに依り、受信料に不満を持っていた人たちの受信料への疑問は、受信料は不当という確信に変わっています。今放送法は妥当な法律かと有権者に問えば、圧倒的多数が不当な法律であると答えるでしょう。その結果、次回の総選挙ではN国党の躍進は間違いないし、NHKから便宜を受けてNHKを守護している議員の選挙区にはN国党の刺客が立てられ、これらの議員多くは落選するはずです。同時に行われる最高裁判所裁判官審査では、裁判官全員にかってない不信任票が投じられるはずです。国民の信任を失った司法制度では判決に重みがなくなります。最高裁には反省が必要です。