地検特捜部、東大卒は起訴しない?
学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地売却や決裁文書改ざん問題で、大阪地検特捜部は9日、有印公文書変造容疑などで大阪第1検察審査会が「不起訴不当」と議決した佐川宣寿元国税庁長官ら10人をいずれも不起訴処分としたという報道です。これで不起訴処分が確定したことになります。
これは、大阪地検特捜部、検察庁および官邸が描いたシナリオ通りだと思われます。この問題は、昔の特捜部なら絶対起訴でした。これだけ分かりやすい犯罪はないからです。裁判でも有罪になったと思われます。これを起訴しなかったのは、安倍首相や麻生蔵相のためにした官僚の行為であり、官邸が何とか起訴しないよう法務省および検察に働きかけたからです。現場の大阪地検特捜部は起訴すべきとの声が強かったと思いますが、検察上層部が改ざんの事実を明らかにし、責任者は処分することを条件に、起訴しないことに応じたと思われます。結果、関わった官僚は刑事被告人にはなりませんでしたが、辞職し、社会的制裁を受けたことになります。従って、大阪地検特捜部としては最善ではなかったけれど、次善の結果と納得したものと思われます。
この際、大阪地検特捜部や検察庁が最も気を使ったのは、不起訴処分に対して不起訴不当の審査の申し立てが確実な検察審査会対策であったと思われます。そのためにも検察上層部としては、改ざんの事実の公表と責任者の処分は譲れない線でした。こうすれば検察審査会では、起訴相当ではなく、不起訴不当の議決に留まると考えたのです。その結果、想定通り不起訴不当の議決に留まりました。不起訴不当であれば大阪地検特捜部で再捜査しますが、結論が変わることはなく、それで終結します。
森友事件での大阪地検特捜部の活躍が東京地検特捜部を刺激し、昨年11月の日産ゴーン元会長逮捕を誘発します。東京地検特捜部は、昨年6月に施行された司法取引を使用した代表事例としてアピールすべく、ゴーン元会長を逮捕したのです。この事件は、事実だったとしても形式犯で罰金か日産の社内で解決すべき事件で、検察が介入するような事件ではありませんでした。不思議なことに、ゴーン元会長と同じく代表権を持ち有価証券報告書に責任者としてサインしていた西川社長は起訴しませんでした。有価証券虚偽記載罪は形式犯であり司法取引を理由として免責するような犯罪ではありません。この決定に対しては、もちろん検察審査会に審査が申し立てられています。ここでは、不起訴不当ではなく、起訴相当の議決が出る可能性が高いと考えれます(実際はゴーン起訴不当なのですが、これを出す権限はありません。)
この2つの特捜部案件の取扱いで見えてきたことがあります。それは、不起訴になったのはいずれも東大卒の容疑者だったということです。森友事件の元財務相理財局長の佐川氏、日産社長の西川氏はいずれも東大経済学部卒です。これを思い付いたのは、今年の4月の東京池袋で自動車を運転、暴走し、母子2名を死亡させ、8名に重軽症を負わせた87歳の元通産省工業技術院の院長が逮捕されなかったのは、彼が上級国民だからだとネット上で騒がれたことがあったからです。元院長も東大卒であり、佐川氏、西川氏と東大卒が逮捕や起訴されないことが続いているからです。どうも森友事件以来、検察の起訴は検察や官邸の匙加減次第となっているように思われます。その中で東大法学部卒がトップラインを占める検察では、東大の同窓は起訴しないという暗黙の了解があるように感じられます。司法暗黒事代に突入している感じがします。