埼玉知事選、自民党を負かしたのはN国党

8月25日投開票の埼玉知事選挙では野党系候補が自民党系候補を破り勝利しました。参議院議員選挙後初の大型地方選挙であり、与野党とも幹部が応援に入り、今後の選挙動向を占う選挙とも言われました。埼玉県は、国会議員は自民党が多く、知事は野党系とねじれています。しかし、国会議員の得票数から見ると自民党が強く、自民党系候補有利という下馬評がありました。結果は、野党系候補が923,482票、自民党系候補866,021票と57,461票の差で野党系候補が勝利しました。自民党系候補は元プロ野球選手で政治経験がなく、野党系候補が前参議院議員で政治経験があるという点も当落に影響したかも知れません。やはり知事には何らかの政治経験が必要と考えるのが普通の市民感覚です。

それにもう一つ当落に影響を与えたのは、N国党候補の存在です。N国党はNHK放送のスクランブル化を唯一の公約にする党ですから、N国党候補は真剣に知事の座を取りに行ったものではありません。次の総選挙に備えN国党の知名度の向上を図ることと得票基盤の強化を狙ったものです。結果N国党候補は64,182票で3.3%の得票率でした。参議院議員選挙での1議席獲得により大々的にマスコミで取り上げあれ、知名度は大きく向上したと思われていたため、N国党ではもっと得票できると考えていたようです。参議院議員選挙前の6月にあった堺市長選も維新系候補と自民党候補が競り合うという埼玉県知事選挙と似た構図の中でN国党候補が立候補し、5.1%の得票率がありましたので、これ以上の得票率を期待していたと思います。これが3.3%に留まった理由は、NHK放送のスクランブル化は埼玉県知事を選ぶこととは次元が異なると考えた有権者が多かったからだと思われます。この問題については国政選挙で示せばよいと考えたのでしょう。従って、次の埼玉県の参議院議員補欠選挙ではN国党候補の得票率は倍増すると思います。だから埼玉県知事選挙の得票率に落胆する必要はありません。

それよりもっと違う面に注目すべきだと思います。それは、自民党系候補と野党系候補の得票差とN国党候補の得票数の関係です。得票差は57,461票であり、N国党候補の得票数は64,182票です。もしN国党候補の得票数が自民党系候補に回っていれば自民党系候補が勝っていたことになります。この現象は堺市長選でもありました。堺市長選挙では勝利した維新系候補と落選した自民党系候補の得票差は14,091票で、N国党候補の得票は15,110票でした。また7月の参議院議員選挙でも同じような現象が見られました。大分選挙区には自民党から安倍首相側近議員が立候補し、野党統一候補と一騎打ちと見られていましたが、ここにもN国党候補が立候補していました。結果、16,655票差で野党統一候補が勝利しましたが、N国党候補の得票数は20,909票でした。即ち、ここでもN国党候補の得票数が自民党候補に回っていれば自民党候補が勝っていたことになります。もちろん自民党支持者だけの票がN国党候補に流れたわけではなく、野党支持者や支持政党なしの人たちもN国党に投票しているでしょうから、こじ付けとも言えますが、大局的には自民党と野党が競っている選挙区にN国党が候補を立てれば、N国党候補の得票数の差で自民党候補が負けるということが言えるように思います。そして埼玉県知事選挙の場合は、前の2つのケースに比べ得票差(57,461票)とN国党候補の得票数(64,182票)の差が拡大しているのです。たぶんNHK受信料に不満を持つ人たちは自民党支持者にも多いものと思われます。自民党支持者は、労働組合や宗教団体を支持母体とする政党よりはっきりとしたものではなく、農家や自営業、お年寄りのように生活は恵まれていないけれど昔から自民党に投票してきたら今も自民党に投票しているという有権者も多いのです。こういう有権者の中にNHK受信料に不満の人が多数おり、N国党に流れていると思われます。従って、競った選挙になるとN国党候補の存在は自民党候補に不利に働いているのです。

N国党は、今後選挙で自民党キラーとして存在感を発揮できます。NHK受信料問題は国民の多くが理解を示すテーマであり、地方選挙のたびに街頭でまじめに訴えて行けば、通り掛かりの人から「応援しているから頑張ってね」と声を掛けられることが多くなり、それが国政選挙での得票増加に繋がっていくと考えられます。これからの活動で重要なことは、一般の人々から「応援するから頑張ってね」という声をたくさん掛けて貰えるようになることです。