次の安倍内閣改造の注目は総務大臣

安倍首相は記者会見で9月の第2週に内閣改造を行うと表明したとの報道です。新聞紙上では、二階幹事長の交替や茂木経済再生担当の外相就任、小泉進次郎議員の初入閣などの観測報道がなされています。今が書き時のようです。

私は、今回の内閣改造の注目は総務大臣人事だと思います。それは、携帯料金引き下げ問題に加え、NHK受信料問題が重要課題となったからです。この2つは総務省の管轄であり、責任者は総務大臣になります。この2つのテーマを担うとなると相当な人物でないと務まりません。

先ず携帯料金値下げ問題ですが、昨年の8月に菅官房長官が講演で「携帯料金は4割値下げの余地がある」と発言し、動き出しました。しかし当時の野田総務大臣は「民間企業の問題に国は介入できない」と述べ、消極的でした。そのためこの問題が動き出したのは2018年10月の内閣改造により、石田総務大臣になってからでした。石田総務大臣になったのは、昨年9月の自民党総裁選挙で石田氏がそれまでの石破支持から安倍支持に鞍替えし、その鞍替えに菅官房長官が関わっていたからと言われています。菅官房長官は、携帯電話料金の4割値下げを進めるに当たって責任者となる総務大臣に自分と気脈を通じた石田氏を据えたものと思われます。何故これほど菅官房長官が携帯料金4割の値下げに拘るかと言うと、今年10月から実施される消費税の2%引上げが家計に与える影響を相殺したいからです。消費税2%の引上げは約5兆円家計の支出を増加させます。一方携帯電話3社は年間13兆円の営業収入(売上高)、約3兆円の営業利益を上げ、営業利益率は約20%にもなります。同じ公益企業である電力が9社で売上高約19兆円、営業利益約9,000億円、営業利益率約5%であるのと比べると明らかに儲け過ぎなことが分かります。携帯電話3社は3社寡占を利用して家計から面白いように収奪しているのです。そしてそれを助けていたのが監督官庁である総務省だったのです。携帯電話3社の営業利益は、これでも儲け過ぎ批判を防ぐために押さえられたものです。販売店への販促費や広告宣伝費などで利益隠しを行っています。電力並みの営業利益にするためには、営業収入(=家計の支出額)の4割=5兆円削減する余地があると考えられます。このように菅官房長官の狙いは的を得たものでした。これを実現するためには、野田総務大臣ではダメで自分の考えを理解して動いてくれる総務大臣が必要だったのです。菅官房長官の狙い通り、石田総務大臣になってから総務省の携帯料金値下げの検討が本格化します。それでも総務省と携帯電話3社とは長い間水と魚の関係にあり、出て来る対策は携帯電話3社に手心を加えたものとなっていました。そこで何回も菅官房長官からダメ出したが入り、今に至っていると考えれます。現在の見直し案でも携帯電話3社は料金体系を大きく変えるつもりはなく、営業収入では増収または微減を計画しています。ということは、家計支出は減らないということです。これでは家計は消費税2%の引上げ分支出を抑えるしかなくなり、消費が落ち込むことになります。従って、安倍内閣としては何としても携帯料金の大幅値下げは実現しなければならないところです。

この問題だけなら石田総務大臣続投だと思われます。状況が変わったのは7月の参議院議員選挙で「NHKから国民を守る党」(N国党)が1議席を獲得した結果、NHK受信料に対する不満が顕在化したことです。N国党が掲げるNHK放送のスクランブル化については大部分の有権者が賛意を示しており、このままでは次の総選挙で自民党にとってマイナスとなります。従って、次の総選挙までにこの問題に何らかの解決案を示す必要があるのです。そうなると総務大臣は相当な人物でないないと務まりません。石田総務大臣にそれだけの実力があれば続投でしょうが、荷が重いようであれば交代が予想されます。

NHK会長人事や経営委員会委員長人事を見れば、NHK人事に対して誰が強い影響力を持っているかが分かります。1つ前のNHK会長籾井勝人氏は福岡県嘉穂郡の出身であり、麻生財務大臣の選挙区の出身です。麻生財務大臣は総務大臣経験者でもあり安倍側近であることから、NHK会長人事を任されたものと思われます。それはNHK経営委員会の委員長にJR九州の石原相談役(当時)が就任したことからも伺えます。共に九州という地方出身者がNHKの2つの要職を占めるのは同じ九州出身の麻生財務大臣の存在なしには考えられません。籾井前会長がいくつかの問題発言をしたことにより、次のNHK会長の人事権は、同じ総務大臣経験者で安倍首相側近である菅官房長官に移ったと考えられます。従って、現上田NHK会長は菅官房長官人事だと思われます。そして今年4月、元NHK専務理事で子会社NHKエンタープライズの社長に転出していた板野裕爾氏がNHK専務理事に復帰した人事も菅官房長官人事と考えられます。次のNHK会長人事は来年の1月に予定されていますが、次はNHK生え抜きの順番と言われており、NHK再編がテーマとなることから、子会社社長の経験もある板野氏を会長としてNHK再編に当たらせるものと思われます。従って、NHK再編は板野氏と安倍改造内閣の総務大臣で進めることとなりますが、キーマンは菅官房長官です。