孫社長の「利益は思い通りに作れる」が破綻するとき

世界中でシェアオフィス事業を展開するユニコーン企業ウィーワークが年内に予定していたIPOを延期するようです。それはIPO時の時価総額が当初想定した半分以下の150~200憶ドルに留まる予想となり、最大出資者であるソフトバンクが反対したからのようです。ソフトバンクは100憶ドル出資していると言いますから、ウィーワークの時価総額のうち半分以上はソフトバックが出資した現金となります。ということは事業としては殆ど評価されていないことになります。当たり前です。シェアオフィスが大きな利益を生むとは思えません。都会のビルならどこでもシェアオフィスにできますから、差別性がありません。こんなビジネスモデルに100憶ドルも投資したソフトバンクの評価力を疑います。ソフトバンクはウィーワークに投資するときIPO時の時価総額を470億ドルと想定していたということです。これも手前勝手な想定です。この時価総額は日本でいえば三井住友フィナンシャルグループと同じです。三菱地所の1.5倍です。普通に考えればあり得ない想定額です。

ソフトバンクはウーバーテクノロジーにも77億ドル投資していますが、ウーバーの時価総額はIPO後3割程度下落しています。これは配車した車の運転を委託する運転手を従業員とする法律が制定される動きがあるなどが原因のようですが、ウーバーの事業は配車代行業であり、普通に考えれば将来性があるとは思えません。これを上手く言いくるめて評価を膨らませてきましたが、実体が見えてきて化けの皮がはがれた状態です。

このようにソフトバックの投資は、専門家が多方面から分析して事業性を客観的に評価したものではりません。イメージを良い方に膨らませ、一方的に希望するIPO時の評価額を設定し、その評価額から逆算した高株価で巨額を投資する手法です。普通の投資家は評価額および投資額の両面で追随できませんから、ソフトバンクの1人相撲となります。これまでは、ソフトバンクの巨額の資金調達に参加し利益を上げた世界の投資銀行がソフトバンクの投資先のIPOも手掛け、ソフトバンクが想定したIPO時の時価総額を作り上げてきました。しかし、世界の投資銀行も収益悪化により規模を縮小するなど弱体化しており、これまでのような強引なやり方はできなくなっています。その結果、ソフトバンク投資先のIPO時の時価総額は実体レベルに抑えられるようになってきているのです。この影響は、ソフトバンクのビジョンファンド1号の収益に現れてきます。2019年3月期の決算でソフトバンクは1兆円を超える投資評価益を計上していますが、これは前回を上回る株価で追加投資した結果生じたビジョンファンドの評価益です。即ち自作自演の利益です。これが今後逆回転します。即ち、投資先の時価総額が追加投資した時点の時価総額を下回るところが続出します。これまでの含み益が一転含み損に転じます。それでも多少の評価益は計上できるでしょうが、問題は投資株式を処分して現金に換えるときです。この場合、収益性が低い会社の大量の株式を処分するには、大幅なディスカウントが必要になりますので、投げ売り状態になることが予想されます。従って、ソフトバンクのビジョンファンド1号の最終的運用収益は厳しいものになることが予想されます。10月頃にビジョンファンド2号を10兆円を超える規模で設定すると言う報道ですが、このファンドの運用成績も同様です。この結果、孫社長は天才投資家として終わることはないと思われます。