監査役が機能するために必要なこと

日本の会社において監査役の数は増えていますが、機能はそれに反比例して形骸化しているように思います。その例が最近の日産自動車(日産)と関西電力です。日産では、ゴーン前会長(ゴーン)らが有価証券虚偽記載で逮捕された事件を見ると、監査役は全く機能していなかったと言わざるをえませんし、西川前社長らのSAR行使の不正も発見できませんでした。日産はゴーンの不正による損害を約350億円と発表しましたが、これが事実だとすれば、監査役は何をしていたのかということになります。職務怠慢か、ゴーンあるいは損失を算定した日産取締役とグルかということになります。

このように監査役が機能しないのは、日本の多くの会社に共通することです。監査役は、会社が本当に必要として置くのではなく、商法で決められているから仕方なく置いているのです。従って人選としては、社長の忠実な部下か、仲の良い社外の人、業務委託などで繋がった弁護士や会計士となります。このように監査役には最初からチェック機能を期待しえないような人を置いていることが多いのです。一部の会社で独立性の強い人を監査役においても、今度は経営内容をチェックする手段を持ちません。上がってくるのは、社内で矛盾なく作成された書類であり、会計士や監査法人が承認にした会計書類です。それを信用できないとして抜き打ち調査する手段を持っていません。こうなると、問題が明らかになったら取締役の共犯となってしまいます。日産や関電を見るとこうなっています。このように今の監査役制度では監査役を何人おいても不正のチェックは期待できません。

そこで今の監査役制度は見直しが必要となります。監査役制度が機能しないのは、会社から直接報酬を貰っていることが最大の要因と思われます。これにより会社と監査役が雇用関係類似の関係になって、会社や自分を任命してくれた社長を窮地に落とし入れるような行動はとれなくなってしまうのです。従って、先ずは会社から直接報酬を貰わないようにすればよいということになります。監査役の人選は会社に任せるとして、選ばれた監査役は全員監査役協会に加入しなければならないこととします。監査役協会は、弁護士協会のような厳しい自主規範を持つ組織とします。もし監査役が監査役協会の規範に反することをしたら、あるいは規範に定める行為をしなかったら、監査役協会を除名され、監査役の地位も失うものとします。監査役の報酬は会社から監査役協会に支払われ、監査役協会から個々の監査役支払われます。これで監査役は会社よりも監査役協会の方を向いて仕事をすることとなります。もし会社で不正の疑いが見つかり、自分一人で対応できない場合は、監査役協会で支援します。実績のある監査役の協力や公認会計士や弁護士の派遣が考えれます。こうすれば監査役は、監査役として求められる機能を発揮できるようになります