経済対策は携帯料金5兆円の引下げが効果的
安倍首相が8日、経済対策のとりまとめを全閣僚に指示したという報道です。自然災害や世界経済の減速、来年の東京五輪やキャッシュバック終了後の景気落ちこみに備えることを狙いとするとのことです。
台風19号や21号による被害、2019年9月中間期の企業決算の落ち込み、中国やインド、東南アジアなど日本の輸出が大きい地域経済の不振などから、決断したものと思えます。しかし、この決断の背景には、消費税2%の引上げが消費の落ち込みとして必ず現れると言う確信にあると思います。これは、これまでの消費税引上げ後必ず起きており、時の政権の命取りになっています。そしてそれは、東京オリンピック後に現れると見ていることが分かります。キャッシュレス購入によるポイント還元策が来年に6月に終了し、7月24日~8月9日の東京オリンピックが終了すると、裸の現実に戻ります。企業の今の決算状況から見ると、来年3月決算も厳しい内容が予想され、来年の賃上げはあまり期待できません。一方社会保険料などの公的負担は上がることが予想されますので、家計は一挙に支出を絞ることは間違いありません。これに中国やインド、東南アジアの景気が悪化していますから、企業業績は来期もっと悪化してもおかしくないと思われます。そこでなんとはこれをカバーしようとしての経済対策だと思われます。内容的には、災害復旧や防災のための公共工事の増発や企業のIT投資の促進支援などが考えられているようです。
こんなことをするよりも確実に景気落ち込みを防ぐ方法があります。それは携帯料金を5兆円下げることです。2019年9月中間期の携帯3社の決算を見ると、NTTドコモとKDDIは売上高は小幅増加、営業利益が微減と小幅減少で、ソフトバンクは増収、増益となっています。即ち、総務省が有識者会議を立ち上げて実施した何回かの携帯料金の値下げ策は全く効果がなかったことになります。来年3月期においても携帯3社の業績は計画通り着地する予想ですので、携帯3社は今後とも値下げする気はないことになります。携帯3社の2019年3月期の決算を見ると、売上高約13兆円、営業利益約3兆円、営業利益率約20%という驚くべき数字になっています。業界1位、2位、3位が共に営業利益率約20%を達成できる業界は他にありません。それも携帯電話事業は、国民の電波を利用した公益事業であり、ライフライン事業です。これはライフラインを利用した家計収奪に他ありません。同じくライフライン事業である電気やガス、水道、鉄道などもやる気になれば携帯3社と同じくらいの利益率とできます。公益事業であることからやらないだけです。もし携帯電話事業でこれが許されるのなら、電力など他の業界もやって来ると思われます。そうなれば、家計は干からびてしまいます。これを防ぐためには、何としても携帯料金を5%引き下げ、携帯3社の営業利益を電力並みの5%まで落とす必要があります。この方法はそんなに難しくありません。先ず携帯3社がMVNO(格安スマホ会社)に貸し出す料金を回線コスト+3%の利益に制限します。現在携帯3社の利益率が高いのは、回線コストに多大の利益を潜らせ、回線貸出料を高くしてMVNOが料金を下げられないようにしていることにあるからです。同時に携帯3社は子会社としてMVNOを持ち、他のMVNOの防波堤としています。(他のMVNOは体力的に携帯3社の子会社MVNOより安い料金設定はできない)。このように携帯回線を持つことで多額の利益が出る構造になっているのです。同じ公益企業である電力の場合、回線に相当する送電線は、発電会社が同じ条件で利用できるようになっています。携帯回線についても送電線と同じようにする必要があります。その他旧契約の解約料を9,500円に据え置くとか、他社への乗り換えには多額の手数料がかかるなどの不条理な取引条件を撤廃する必要があります。
携帯料金を5兆円引き下げれば、携帯3社の営業利益は赤字になると思われるかも知れませんが、そんなことはありません。営業利益約3兆円は、巨額の代理店コストや広告費を計上してのものであり、これらを合理化すれば5兆円くらいの利益が出ます。これで携帯3社は、売上高約8兆円、営業利益4,000億円、営業利益率5%と電力業界並みとなります。
携帯料金を5兆円下げるということは、5兆円の減税と同じことであり、消費回復効果があるのは間違いなく、これが一番の経済対策です。要は総務省が本気でやるかどうか、政府が本気であらせるかどうかの問題です。政府が本気でやらせなかったら、携帯料金はソフトバンクグループの投資損失の穴埋めに使われることになります。