N国党が公職選挙法を変えた!

政府は、都道府県議選挙と市区長村議選の被選挙権の条件である「選挙区域内に3カ月以上住所を有していたことがあり、引き続き有する者」(3カ月の居住実体)の要件について、立候補者が届け出時に出す「宣誓書」に住所要件を満たしていると明記させ、これが虚偽だった場合、30万円以下の罰金と5年間の公民権停止の罰則とする内容に公職選挙を改正するという報道です。

公職選挙法の3カ月の居住実体の要件は、届出時にチェックされることは無く、またこの要件を満たしていないことが分かっていても届け出を受理し、その後分かっても公表することもなく、開票後被選挙権がなかったとしてその立候補者の得票を0とする取扱いが行われてきました。この場合、この立候補者に投票した有権者の票が死票になってしまいます。そのため立候補受付に際して立候補者のこのような要件をチェックすべき、またはこのような要件を満たしていないことが分かった時点で被選挙権がないことを周知すべきとの指摘はこれまでもなされてきました。しかしこれが長年放置されてきたのです。今回の公職選挙法改正は、立候補者に罰則を科すことによって3カ月の居住実績の要件を厳守化しようとするものです。

この問題に正面から取り組んだのが「NHKから国民を守る党」(N国党)です。ことの発端は、2019年4月17日投票の統一地方選挙でした。伊丹市議会議員選挙に立候補した同党の候補者は、立候補の受付を受理され選挙活動を行い、開票結果を楽しみにしていたところ、選挙管理委員会から得票数0と発表されたのです。いくらN国党が関西では知名度が低いと言ってもNHK受信料に反発する人は少なくないことから0は絶対に有得ないことでした。実際当該候補者の得票数は2,992票(得票率4.8%)であり、当選する得票数でした。そこで選挙管理委員会に確認したところ、伊丹市に3カ月以上居住していることが立候補の要件となっており、当該候補者の場合は、尼崎市に25日、宝塚市に2ヶ月27日居住し、伊丹市には全く居住していなかったため伊丹市議会議員選挙の被選挙権がなく得票数0と決定したと言うのです。当該候補者は選挙に出る自治体がある県内の自治体に3カ月以上の居住実績があれば良く、選挙区の自治体に3カ月以上の居住実績が必要ということは知らなかったようです。

立候補要件を誤解していた立候補者が悪いことは間違いありませんが、選挙管理委員会としてもその事実を知ったら立候補要件を満たさないことを立候補者および有権者に伝えるべきであり、何故伝えなかったのかと怒りたくもなります。

これだけの大問題ですから、当然選挙管理委員会も総務省に確認をとったようで、公職選挙法では立候補要件は決められているが選挙委員会には実質審査権を与えておらず提出書類が完備しておれば受付を受理するしかなく、最高裁判決(1960年)でも「公職選挙法の規定によれば、選挙長は立候補届出および推せん届出の受理に当つては、届出の文書につき形式的な審査をしなければならないが、候補者となる者が被選挙権を有するか否か等実質的な審査をする権限を有せず、被選挙権の有無は開票に際し、開票会、選挙会において、立会人の意見を聴いて決定すべき事柄であると解するを相当とする」となっており、それに従って事務を行ったということです。

この取り扱いについて「NHKから国民を守る党」は、制度の明確化を求めて戦いを挑んで来ました。その為同年4月22日投票の統一地方選挙で同じ兵庫県の播磨町議会選挙にホテルを現住所として候補者を立て、110票を得ましたが、開票後選挙委員会は得票数0としました。

さらに同党は、同年5月26日投票の東京都足立区議会選挙で足立区のホテルを現住所として隣の墨田区居住者を立候補させました。この選挙では、この候補に投票しても無効となることを候補者も述べ、また広く報道されていましたが、この候補者は5,548票、当選者の第8位に相当する票を獲得しました。もちろん選挙委員会は開票後当該候補者の得票数を0としました。

N国党のこれらの行為に対しては、選挙を冒涜するものとの批判もありましたが、こうでもしないと今回の公職選挙法改正はなかったと思われます。何百人という国会議員がいながら変えられなかった不条理な制度を、当時1人の国会議員もいなかったN国党が変えたのです。N国党はNHK受信料と言う世の中で最大の不条理な制度を変えることを唯一の政策にしています。公職選挙法の問題はその実現過程で出てきたものです。やはり世の中を変えるのはたくさんの政策を掲げた政党ではなくN国党のような「1つの政策の党」です。世の中の不条理な制度を変えたいと思っている人は、モデルケースとしてN国党を応援して損はないと思います。