NHKネット配信費用問題、衛星放送の分離民営化が1つの回答

NHKは総務省からの要請を受け、常時同時配信を含むネット業務全体の費用を大幅に削減する方針を固めたと言う報道です。NHKのこれまでの実施基準案では、ネット業務の費用は受信料収入の2・5%以内(現在約175億円)に収めるとしながら、東京五輪・パラリンピック関係、国際放送の配信などネット4業務(最大90億円)を別枠にするとしていたため、これだと実質的に受診料収入の3.8%になるとして、総務省が見直しを求めていました。

NHKは11月28日に開かれた自民党の「放送法の改正に関する小委員会」(佐藤勉委員長)で、2020年度のネット業務の費用については総務省の要求通り2・5%の枠内に収める案を提示したようです。その手段として、深夜や早朝の時間帯は配信しないことや国際放送の配信の見直しなどが入っているようです。

今回の総務省の要請は、高市総務大臣の指示に基づくものと言われています。高市総務大臣は、2014年9月から2017年8月まで3年間総務大臣を務めて今年9月再登板しました。これは総務省が安倍内閣の命運を握る2つの重要なテーマを抱えており、これを実現するには総務省の組織と業務を知悉した高市議員の大臣再登板しかないと安倍首相が判断したからだと思われます。その2つのテーマというのは、携帯料金の4割値下げとNHK受信料の引下げです。携帯料金の4割値下げについては、昨年8月に菅官房長官が問題提起しましたが、ここまで全く成果が出ていません。この10月からの消費税2%引上げにより今後消費が落ち込むことは確実であり、これを最小限に抑えるには高すぎる携帯料金を引下げ、家計に支出余地を作ってやる必要があります。携帯料金を4割下げれば消費税2%引上げの影響を相殺することが可能なのです。そして携帯3社はそれが可能な過剰な利益を上げているのです。

2つ目のテーマはNHK受信料の引下げです。NHK受信料に対する不満は古くから内在していましたが、今年6月の参議院議員選挙で「NHKから国民を守る党」(N国党)が1議席を得たことで顕在化しました。N国党は地方議会を中心に議席を伸ばしており、このままでは次の総選挙でも議席を伸ばすことは確実です。そしてこのN国党の影響を一番強く受けるのが自民党なのです。それは自民党支持者の中にNHK受信料に苦しんでいる人がたくさんいるからです。従って自民党政権としては、この問題に何らかの対応策を示さないわけにはいかなくなっています。

今回NHKが検討途上の案を非公開で相談した自民党の「放送法の改正に関する小委員会」は、今年5月のネット常時同時配信のための放送法改正を主導した組織です。佐藤勉委員長は放送改正の国会審議の前に政府に対して速やかに法案を提出するよう要望をしています。この小委員会こそNHK受信料問題解決の鍵を握る組織と言えます。

NHKとこの自民党の小委員会は、ネット配信費用を総務省の要望通り受信料収入の2.5%内に収めることで乗り切ろうとすると思われます。更に前回の案から少なくなる90億円を値下げに回すとの回答も考えられます。その結果、2020年度のNHK受信料引き下げ額は175億円(2.5%)から265億円(3.8%)となるとして努力した所を見せようとするかも知れません。

しかし、これではNHK受信料問題の根本的解決にはなりません。更に不満を強める効果しかないと思われます。それはNHK受信料問題の本質は、NHKの必要性が小さくなっていること、家計がNHK受信料の負担に耐えられなくなっていること、にあるからです。NHKや総務省、自民党の「放送法の改正に関する小委員会」はこれに真正面から取り組む必要があります。先ずは明らかに公共放送とは言えない衛星放送をNHK本体から分離し、民営化するくらいの回答が必要です。または衛星放送だけスクランブル放送化することでも同様な効果が得られます。そうすればNHK受信料は月1,000円程度に下げられます。これくらいの回答がないと、NHK受信料に対する不満は抑えられません。