東大特任準教授差別投稿事件、突出した能力を求めれば起きる事件

東京大学学際情報学府特任准教授で、AI開発などを行うベンチャー企業Daisy社長を務める大澤昇平氏のツイッター上の発言がネットや新聞紙上で批判されています。

発端は2019年11月20日のツイートのようです。同氏は先ず「弊社 Daisy では中国人は採用しません」と投稿、続けて「中国人のパフォーマンス低いので営利企業じゃ使えないっすね」と投稿、更には「そもそも中国人って時点で面接に呼びません。書類で落とします」と投稿したということです。民間人なら「変な人がいるな」「中国人と何かあったのかな」というぐらいで済むのでしょうが、東大特任准教授であったことから問題が大きくなったように思います。同氏についてネットで調べて見ると、かなり注目を集める若手AI技術者のようです。

大澤氏は現在32歳で、福島工業高等専門学校在籍時の2007年にブックマーク連携型検索エンジン「netPlant」を作成し、経済産業省の未踏ソフトウェア創造事業に採択され、スーパークリエーターの認定を受けています。その後筑波大学に編入し、東京大学の博士課程に進んでいます。その後現在のポジションにつき、同時にベンチャー企業を設立し社長を務めているようです。専門はAIとブロックチェーンという今話題の分野となっています。

私が注目したのは、同氏が高専から大学に編入している点です。最近高専が見直されていますし、高専から大学に編入して成功している人も見受けられます。ということで私は最近高専経由大学編入という進路に注目していました。普通高校に入って大学入試のために興味のない科目を勉強するより、高専に入って好きな科目の勉強に注力した方が伸びると考えられるからです。例えば大学でコンピュータを学ぶのなら、高専からコンピュータを学んだ方が充実することは確実です。普通高校経由大学では一般教養的な科目を勉強しなければならない為能力を分散することになるのに対して、高専経由大学は自分の好きな科目に全部の能力を集中できます。芸術家やプロスポーツ選手の進路に近いと思います。従って、高専経由大学の進学者の中に優秀な人材が出て来ることは必然のように思われます。大沢氏もこの例だと思われます。

しかし、このコースの場合、専門分野に自分の能力の全部をつぎ込むため、一般教養的な部分が欠ける可能性が出てきます。偉大な芸術家やプロスポーツ選手の中にも見られる現象です。これが今回の問題でもあったように思います。私は文系人間で会社員をしている頃はコンピュータはとんと分かりませんでしたが、早期退職後コンピュータプログラミングを学んでいます。まだ2年くらいしかならないので、私の経験に基づいて書くのははばかられますが、コンピュータプログラミングの世界は一般の業務とは相当違う世界です。この世界で成功しようと思えば、一般社会を捨ててコンピュータ世界の住人になるしか無いように思います。頭を100%コンピュータプログラムで一杯にすると言っても良いと思います。音楽家が日常生活で生じる様々な現象を音で評価するように、コンピュータプログラムの世界で一流に上り詰める人は、コンピュータプログラムを通して評価します。それは当然一般社会の評価とは異なるものとなります

その結果、一般生活者と評価にずれが生じ、社会的批判を浴びる言動や行動をする人が出現すると思われます。

しかし、今のAIなどの分野では、こういう一部の突き抜けた能力を持つ人でないと役に立たなくなっています。そういう人が出ない国はコンピュータ後進国となります。従って、社会としてはそういう人の秀でた能力を生かすために、一部の社会的欠陥には目を瞑る寛容さが必要となると思います。