ヤフーとLINEの統合、日本人の個人情報が韓国に流れる危険

ヤフーとLINEが経営統合を発表しました。狙いはGAFAへの対抗と言われています。それも少しはあると思いますが、両社が合併してもGAFAの競争相手にはなりえませんので、これは大袈裟過ぎると思います。実際の狙いは、ネットプラットフォーマーとして日本国内トップに立ち、国内のネットビジネスの勝者になることです。ヤフーはネット検索ではトップですが、ネットショッピングでは楽天の後塵を拝していますし、その他のネットビジネスも強くありません。その為、ラクスルやZOZOを買収して強化に努めています。一方LINEは、メッセージアプリとしてはトップですが、その他のビジネスは無いと言っても良い状況です。その為、MVNOや金融、QR決済などを育てようとしています。しかし、ネットビジネスでは後発のため、メッセージアプリ利用者は既に利用しているネットビジネスがあり、移行させるのは至難の業となります。そうなると両社とも将来じり貧なのは明確でした。そこで両社が統合するということは、十分予想されたことでした。

そもそも両社は、オーナーが共に韓国を祖国とすることで密接な繋がりがありました。ヤフーの創業者で実質的オーナーはソフトバンクグループ(SBG)の孫社長であり、韓国を祖国とします。一方LINEは韓国のNEVERが親会社であり、創業者は李海珍氏という韓国人です。孫社長は、国籍上は日本人だと思いますが、父親は韓国出身であり、ITビジネスの成功者として韓国の英雄です。今年7月日本が韓国に対し輸出管理規制を実施した際には韓国で文大統領や韓国財界人と会談しています。この際韓国では、孫社長は今後韓国に巨額の投資を行うとの報道もありました。実際前年には韓国のIT企業に約2,200億円の投資を行っています。このように孫社長は祖国韓国に思い入れが強く、韓国のIT経営者ネットワークの中心人物と言えます。このような背景のもとにヤフーとLINEの統合は決まったと考えられます。そうでないと、ヤフーとLINEの持ち株会社Zホールディングの持ち株割合をソフトバンク50:NEVER50とすることなど考えられません。直前期の経常利益では、ヤフーは1,233億円に対してLINEは32億円(今中間期は284億円の赤字)と収益力に大きな差があるからです。これはヤフーの利益の半分をNEVERにプレゼントするようなものです。穿った見方をすれば、日韓関係の悪化から今後韓国への投融資が禁止されることを見越して、合法的にヤフーの利益(日本の資金)をNEVER(韓国)に流す仕組みを作るための統合とも考えられるのです。

それよりも日本にとってもっと重大なことは、ヤフー約5,000万人、LINE約8,000万人という日本人の個人データが韓国に流れることです。既にLINEからは流れていると思いますが、ヤフーのデータが加わることに依って、データの量と質が拡充します。この情報は日本人の戸籍情報を入手した以上の価値を持つことになります。戸籍情報に購買情報や検索情報、交遊情報、嗜好情報などが加わることを考えれば分かると思います。これはビジネスにおいて有益なばかりでなく、安全保障においても重大な意味を持ってくると思われます。

最近米国で、中国のByteDance社が運営する動画投稿アプリTikTok(ティックトック)が無断に利用者の個人情報を中国に転送したとして、米カリフォルニア州の学生が集団訴訟を起こしたとの報道がありました。利用者が世界で5億人を超えるTikTokは安全保障上の脅威がある可能性があるとして米国政府が注目していると書かれています。ヤフーとLINEの統合については、日本の審査当局はこういう観点からも検討する必要があると思われます。