ゴーン逮捕は令和の攘夷事件

報道によると、日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(以下ゴーン)が巨額の役員報酬を隠したとされる事件で、12月10日、証券取引等監視委員会(以下監視委)が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで、日産に対して課徴金約24億2,500万円を科すよう金融庁に勧告したとのことです。
監視委は今年の1月までに、2011年3月期~18年3月期の8年間で、ゴーンの役員報酬計約91億円分を隠したとしてゴーンを告発し、この8年分を東京地検特捜部が起訴しています。2011年3月期~2014年4月期までは課徴金については時効が成立しており、今回は時効となっていない15年3月期~18年3月期の4年分についての課徴金ということです。本来のルールで行けば課徴金額は約39億7,100万円となりますが、日産は監視委が本格検査に入る前の今夏、違反を自主的に申告したとして減額が認められたということです。監視委内では、申告時点で既に刑事事件化いていたため、減額を認めることには異論もあったということですが、日産側の検察への申告が事件化の端緒だったことを考慮して減額を認めたということです。
ゴーンが起訴された事件の初公判は、来春にも開かれる見通しとなっており、ともに起訴された日産が有罪になれば日産に罰金が科され、課徴金額と相殺されるということです。

本件は一言で言うと監視委・検察・日産の出来レースです。日産、監視委に検察庁から出向している検察官と東京地検特捜部が一体化していることが伺われます。そうでないとこの事件は起きなかったし、ゴーン逮捕もなかったと思われます。

考えてもみて下さい。有価証券報告書に記載しなかったとされるゴーンの報酬約91億円は、まだゴーンに支払われていないのです。これは2019年3月期第3四半期決算で日産がこの金額を引当金としていることからもはっきりしています。この決算説明の際当時の西川社長は、「払わなくてもよいはずだが保守的に計上した」と述べています。もしゴーンが約91億円の報酬を受け取っているとすれば未申告のはずですが、国税はゴーンに脱税として重加算税を課していないし、検察に告発もしていません。これらのことから、有価証券報告書に未記載とされる約91億円についてゴーンが受け取っていないのは間違いありません。受け取っていない報酬についても記載しないといけないのでしょうか?考えられません。またゴーンが約91億円を受取るために日産とコンサル契約を結んでいたとされる点についても、西川社長とゴーンとの間で結んだ契約書があるということですが、これは取締役会で承認されていないと思われ、ゴーンと日産の間では有効な契約とはなりません。西川社長が日産の取締役会の承認を得る義務を負うことになると思われます。こんな契約取締役会が承認する(承認した)はずがありません。承認したら賛成した取締役や監査役が特別背任罪となります。

このように有価証券虚偽記載についてはあり得ない逮捕と言えます。もし正当な逮捕言うならこれらの疑問に是非説明して欲しいものです。

今回のゴーン逮捕は、ゴーンが推し進めたルノーと日産の合併を阻止するために、経済産業省、日産、監視委および東京地検特捜部が謀議の上行った政治逮捕と言えます。言うなれば日産を外国企業にしないために外国人経営者を逮捕した令和の攘夷事件と言えます。この事件について法曹関係者の多くが沈黙していることに法曹村の閉鎖性が伺えます。森友事件から始まりゴーン逮捕に至っては、検察暗黒時代の到来を感じます。