大病院の受診抑制には個人病院の信頼向上が不可欠
政府は200以上のベッド(病床)がある病院を対象に紹介状がない患者が受診した際に一定額を上乗せする制度を導入する方針とのことです。現在も病床400以上の420病院を対象に、紹介状を持たずに受診した患者には、原則3割という定率の窓口負担に加えて初診で5千円以上、再診で2,500円以上病院が法定の診療報酬とは別に上乗せしています。
これに更に数千円を上乗せし、大病院への患者の集中と検査などによる医療費の増加を抑えることを意図しているようです。これでは、お金のない人は設備の整った大病院に行けず、大病院はお金のある人の病院、個人病院はお金のない人の病院と言う棲み分けを作ることになります。大病院に患者が集中する根本的原因を考えそれを除去しないと、所得による医療格差を生んでしまいます。
大病院に患者が集中する理由は、大病院には検査設備が充実していること、診療科が多いこと、医師・看護師などのスタッフが訓練されていること、が大きな理由です。先ず検査設備については最先端の検査機器が揃っています。診療科も10以上あり、ほぼ患者の受診したい科があります。医師も向上心が強く、かつ病院内で評価に晒されているため真剣です。また病院内の教育研修制度が充実しており、常に新しい医療技術を修得できます。看護師についても、常に若い看護師が入局しており、ベテラン、中堅による指導教育体制が確立しています。
これに対して、政府が誘導しようとしている個人病院はというと、真逆なことが言えます。先ず医師が得意とする専門科以外の検査装置はありません。検査で当てになるのは血液検査くらいです。原因が分からなくて困っている患者にそんな医師の言うことを信じろと言う方が無理です。個人病院に掛かると如何に医師の言うことが頼りないかが分かります。信頼できるのは検査結果しかないということを痛感します。そうなると最初から検査設備が揃った大病院に行こうということになります。それに個人病院の医師は、開業後は技量を磨く機会がありません。個人病院では自分の判断が全てであり、その結果に対して第三者のチェックが入ることがありません。従って診断が間違ってもそれが訂正されることはないし、技量が向上する余地がありません。よく高校のベテラン教員や大学の教授が何年も使っている授業用のノートを机において講義している姿を目にしましたが、個人病院の医師の場合、その姿に近いと思います。研修医や勤務医時代に獲得した診療知識を使い回しているだけのように思います。そして個人病院の場合、医師は王様ですから、患者にしつこく聞かれると怒り出す、あるいは不機嫌になることが多いように思います。個人病院の医師に取付きにくさを感じる患者は多いと思います。更に看護師にも問題があると思います。個人病院は医師が王様ですから、看護師には絶対服従が求められます。大病院のように医師が不条理なことをしたら、上層部に訴えることができません。従って、個人病院に勤務する看護師はこれに耐えられる看護師となります。大病院で問題があって個人病院に流れてきた看護師や、性格や技量に問題を抱えている看護師が多いように見受けられます。少なくとも大病院の看護師のように使命感に燃えているようには感じられません。
このように政府が大病院の受診料を上げて誘導しようとしている個人病院は、患者からすると掛かりたくない多くの問題を抱えています。これらの解決なしに大病院の受診料を上げて個人病院へ行かせるのは、患者にストレスを与え病気を悪化させるだけです。専門の違う個人病院が集まった医療モールのような共同経営を目指させるなど個人病院改革が不可欠です。