投資時に半分以上は含み損?

ソフトバンクグループ(SBG)の投資事業に暗雲が立ち込めています。SBGが運営するビジョンファンドの投資資金は10兆円と言われています。10兆円と言えばベンチャーキャピタルの範疇を越え、大企業買収ファンドでないと運用できない資金量です。従って、ベンチャー企業に投資するのなら10兆円規模としたところから失敗が見えていました。こんな金額を投資するベンチャー企業は世界中を見回してもありません。従って、これを使い切るには1社辺りの投資金額を巨額にするしかありません。その為には投資時の評価額を膨らませるしかなくなります。ここから時価総額1,000億円以上のユニコーン企業に投資するというというコンセプトが出てきています。売上高1,000億円ではなく時価総額1,000億円と言うのが味噌です。これはSBGが初回投資で評価額を膨らませて巨額の投資をすれば作れるのです。またSBGの投資によってしか誕生しなかったとも言えます。ユニコーン企業があってSBGが投資したのではなく、SBGが投資した結果ユニコーン企業が誕生しているのです。従って、最初に投資時点で過大評価が始まっていると考えられます。

それを立証しているのがWeWorkです。SBGは今年1月に約470億ドル(約5兆1,000億円)で投資していながら、今年11月には評価額は約78億ドル(8,200億円)に落として追加投資を決めています。現在資金繰りに窮しているとのことですから、約8,200億円と言う評価も疑わしいと思われます。WeWorkは普通に考えれば不動産のサブリース会社ですから、約470億ドルなどという評価が付くはずはないのです。日本の丸の内の大地主三菱地所の時価総額が約3兆円(275憶ドル)です。そのほかIPOしたUberの時価総額はIPO時から約4割下落し、SBGは同程度の含み損を抱えたようです。これもネットでタクシー予約の代行が行えることが強みであり、運行は人が行うことから、儲かるビジネスではありません。従って今の時価総額約490億ドルも過大だと思われます。また12月14日にはSBGの投資先OneConnect Financial Technologyがニューヨーク証券権取引所に上場したようですが、SBGが投資したときの時価総額が75億ドルなのに対し、上場時の時価雄額は約38憶ドルと約半分になったということです。SBGが投資した2つの上場企業では時価総額がSBGが投資した時点の半分近くとなっており、SBGが時価総額を膨らませて投資していることが分かります。これから考えると少なくともSGBの投資総額の半分は含み損ということが予想されます。

SBGはUberと同じ事業内容であるシンガポールのGlabや中国の滴滴出行などにも多額の投資を行っており、これらの投資はUberへの投資と同じような運命にあると考えれます。またSBGは米国で犬の散歩代行を事業とするWag Labにも325億円投資しており、多くの投資家から疑問が出されていましたが、12月初旬売却したとの報道です。また、インドのホテルチェーン企業OYOはSBGから約1,000億円の投資を受けてチェーン店を拡大しましたが、赤字が膨らみ問題が噴出しているとの報道です。WeWorkと近い事業展開であり、成功はおぼつかないと思われます。

このようにSBGの投資は、収益性に無関係にひたすら時価総額を膨らませており、時価総額は事業実体と大きく乖離していました。それも将来収益性が高まる事業実体ではなく、ひたすらIPOで高値を付けるシナリオとして時価総額を膨らませていました。それはSBGがIPO時の時価総額をコントロールできると言う自信があってのことだったと思われます。SBGはグループ全体で約18兆円と言われる借入の組成や米国スプリント、英国アームなど6兆円近くの買収で世界の投資銀行に巨額の手数料を落として来ました。その結果、世界のIPOを牛耳る投資銀行がSBGの掲げるシナリオ通りにIPOを実行すると考えたようです。しかし、これが間違いでした。さすがの投資銀行も実体と大きく乖離したIPOはできないとなったようです。

今後SBGの投資資産の評価は、収益還元ベースに収束して行くと考えられます。日本の不動産バブルで膨れ上がった土地の価格が収益還元価格に収束して行ったのと同じようになると考えられます。これが正しいとすると、SBGの投資総額約8兆5,000億円は、少なくとも4兆円、ひょっとすると6兆円近い損失を出す可能性があります。