秋元議員逮捕を深読みすれば
東京地検特捜部は25日、日本でのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業への参入を目指していた中国企業側から、現金300万円や約70万円相当の利益供与を受けたとして、収賄容疑で秋元司衆院議員を逮捕しました。秋元議員は2017年8月から18年10月まで内閣府副大臣でIRを担当し、観光施策を所管する国土交通副大臣も兼務していたので、職務権限があり便宜の供与が可能だったということです。現職議員の逮捕は10年ぶりということです。
私はこのニュースを聞いて少し奇異に感じました。と言うのは、収賄金額が僅か約370万円であり、贈賄側の中国企業はIRに参入できていないからです。ようするにお金は貰ったかも知れませんが、実害は生じていないことになります。収賄の結果、国益を害するような事態が生じているのなら、金の多寡に関わらず逮捕もあると思いますが、そうでないのなら逮捕までは至らないのが普通ではないかと考えるからです。
それが今回逮捕したということは、特捜部に別の狙いがあるのではないかと深読みしました。別の狙いとしては、今の特捜部および検察が置かれた状況から2つ考えられます。1つは、来年の春にも始まると言われる特捜部が2018年11月に逮捕した日産のゴーン元会長逮捕に関する裁判を前に、特捜部のイメージアップを図るためです。ゴーン逮捕はゴーンが有価証券報告書に報酬を少なく記載したという金融商品取引法違反が元になっています。しかし、ゴーンが受け取った報酬は記載通りであることは明白ですが、特捜部は将来追加で受け取る約束があったとしてその差額を虚偽記載額としています。しかし、有価証券報告書に記載すべきは実際に受け取った金額であり、将来の金額ではありません。それに将来受け取る契約があったと言ってもその契約はゴーンと当時の西川社長の間で結ばれたものと言われており、日産の取締役会が承認したものではありません。従って、日産は支払い義務を負っておらず、ゴーンには正当な受け取り権限が生じていません。即ち、有価証券報告書の虚偽記載は存在しないのです。従って、本件容疑に関する逮捕は特捜部の失態である可能性が大です。別件の特別背任に関しては、金融商品取引法違反の成立が怪しくなったことから追加した可能性が高く、本来日産社内で解決すべき問題であり、検察が介入する問題ではありません。ゴーン事件については、このように考える法曹関係者が多いと思われます。ゴーン事件では、ゴーンは多額の報酬批判を恐れて報酬を減額しており、減額した報酬を将来取り戻すことを計画していたということですが、日産はゴーンが減額した約91億円得をした結果となっており、日産・株主・投資家には損害は生じていません。損害が生じたとすればゴーンが逮捕されたことに依り、日産の経営体制が崩壊し日産の業績が悪化したことが揚げられると思います。
来年春にはゴーン事件の裁判が始まると言われていますが、ゴーンの弁護側は無罪を主張しており、私も裁判所が同じ法務行政側として検察に配慮しなければ、当然無罪になると考えます。そう言う中で、特捜部は悪い政治家を逮捕した正義の味方というイメージを確立する必要があったと考えれます。それにゴーン逮捕は余りに筋が悪い案件であり、逮捕を指揮した特捜部長は通常2年の人気が切れても交代できない状況になっていると言います。今回の秋元議員逮捕は筋は悪くなく、ゴーン逮捕の失態を打ち消す狙いがあったとも考えられます。
もう1つは、秋元議員逮捕に国民の関心を集めて置き、もう1つの政治家案件である河井克行・案里議員および菅原一秀議員の公職選挙法違反容疑から目を逸らさせる狙いです。こちらの3人は安倍首相や菅官房長官に近く、甘利議員の受託収賄容疑や森友事件での文書偽造容疑などがもみ消されたことを考えると、もみ消すべく検察への働きかけが行われているのは間違いないと思います。これを成功させるために国民の目を秋元氏の贈収賄事件に向けさせる狙いとも考えられます。秋元議員逮捕が話題に中で、12月26日には森法務大臣が1人の死刑囚の死刑執行を命じています。これなど国民の目を逸らす典型的なやり方です。ただしこれらはいずれも検察不信からする私の深読みです。
追伸;上記記事は12月28日に書いたものですが、12月31日朝のニュースで、ゴーン氏が日本を出国しレバノンに到着したとの報道がありました。出国理由としては病気治療のためと発表されるのでしょうが、実質的には日本政府がゴーン逮捕は検察の失態であったことを認めたということです。秋元議員逮捕、死刑執行、ゴーン出国は政府・法務当局間で綿密に打ち合わせを行い、実行されたものと思われます。その際、検察と政府の間で、河井克行・案里議員、菅原一秀議員については起訴しないという取引がなされた可能性があります。