小さな町が医師を確保する方法
私が住んでいる福岡市内には個人病院が多く、医師過剰とも思える状況です。一方私は元々熊本の田舎町出身の為、田舎の町が医師確保に悩んでいる実態も知っています。地方の場合、小さな町ではなく市レベルでも医師が不足していると思います。それは、地方は子供の教育環境が悪く、医師が定住する環境にないからです。従って、地方では医師の確保が重要課題となっています。
私も高校時代、地元の町から医学部に合格したら学費は全て町が面倒を見ると言われましたが、そんなレベルにはなく、実現しませんでした。
その後大学を卒業して東京で会社員となりましたが、同僚に灘高校や麻布高校出身で東大卒がおり、かれらの勉強の様子を聞いて、これでは田舎出身者が東大や医学部に合格するのは不可能に近いと思いました。
2019年11月12日放送の「名医とつながる、たけしの家庭の医学」で礼文島の赤ひげ先生こと升田鉄三医師が紹介されるのを見て、感動すると共に考えることがありました。升田医師は1950年生まれの今年70歳です。礼文島の町の診療所に着任して今年34年になるということです。35,6歳で着任し、医師として一番油の乗り切ったときから、島の医療を支えてきたことになります。升田医師が34年も島の医療に携わってきたのは、礼文に生まれ育ったことが一番大きいと思われます。
ここに地方の町が医師を確保する答えがあると思います。それは地元出身の子供を育て、医師にするしかないということです。これを実現するためには、物になりそうな小学生を見つけ出し、特別な教育を施す必要があります。町の小学生と言っても人数が少ないでしょうが、小学校の3、4年生から伸びそうな子供を見つけ出し、学校の授業の終了後課外授業を実施します。そして、土日や春休み、夏休みなどに町が費用を出し、近くの大きな町の塾に通わせます。目的は、私立の中高一貫校に入れるためです。医師になる確率を高めるためには、私立中高一貫校が有利です。ここへの進学者の多くが医師を志しており、学校はそのためのカリキュラムを組んでいます。医師になる競争は中学校から始まっています(実はその前の中学受験から)。ここに入れれば医師になる可能性が出てきます。後は成績が順調に伸びるかどうかです。中学校段階で成績が伸びず、今後医師になる見込みがなければ、高校は公立に行ってもらい、ここで町の支援は打ち切りです。医師になる可能性があればそのまま一貫高校に進学して貰います。目出度く医学部に合格すれば学費および生活費を町が支給します。国立ばかりでなく私立医学部でも良いと思います。研修医期間中も生活費を支給します。研修期間後は、升田先生のように35歳まで大きな病院に勤務し、実践的な医療技術を学んで貰います。町の医師になるためには、少なくとも外科と内科の医療技術が必要です。この2つの技術を獲得するためには、医療技術の進んだ大病院で10年くらい勤務する必要がります。その結果、町の医師として勤務するようになるのは35歳くらいからになります。8,9歳から面倒を見て実際に配置に付くのは35歳くらいですから、約26,7年の長期事業となります。費用としては1人3,000万円程度(国立大学医学部の場合)と考えられます。それでもこの目論見通りに医師が誕生するのは10年に1人くらいになると思われます。そうなればローテンションで勤務して貰うこともでき、医師の負担も軽くすることができます。これをやらないと、更に人口が減少する将来地方が安定的に医師を確保するのは困難だと思われます。