公認会計士などに限定法曹資格を認めるべき
ゴーン事件は、東京地検特捜部が経済的悪影響よりも検察の正義感を優先した結果であると考えられます。これは法曹関係者なら「そうなるのも仕方ない」と考えると思います。なぜならば、法曹教育は法理と言う観念の教育であり、刷り込みだからです。音楽教育を受けた人が、世の中にある音を音符で表現するように、法曹関係者は世の中の出来事を法律行為として捕らえます。例えば、誰かと話してしている場合でも、「あ、今の発言は脅迫罪に該当するな」、「あ、この発言は名誉棄損に該当するな」とか考えます。もちろん、だから訴えるということにはなりませんが、法曹教育の結果、そういう思考回路が出来上がるということです。
法曹の世界で頻繁に使う言葉は、違法、責任能力、故意、過失、受忍限度など全て観念用語です。即ち、全て実体が存在せず、物差しがはっきりしない概念です。従って、裁判が藪の中の戦いになり、裁判官が「えい、や」で判決を下すのは仕方ないことです。法曹関係者には、法律の世界はそういうものと言うコンセンサスがあると思います。従って、東京地検特捜部がゴーンを逮捕したことについても、法曹関係者は驚くほど発言していません。発言しているのは、ヤメ検の弁護士ばかりで、殆どが東京地検特捜部擁護の発言です。それはヤメ検が検察と取引をすることで存在感を発揮しているからだと思われます。ただし、1人だけヤメ検ながらゴーン逮捕の不当性を主張し続ける弁護士がいます。郷原信郎弁護士です。このことがゴーンに知れ、ゴーンがレバノンへ逃亡する前5回ほどゴーンに面会し、その内容を入れた本を出版する予定だったようです。私も郷原弁護士のブログは読みましたが、さすがに一流の弁護士で、考察が深く、同意する内容が多く含まれていました。なぜ郷原弁護士がこうも他の弁護士と違うのかと調べて、同氏は東大理学部出身であることを知りました。理学部と言えば科学系学部であり、科学的考証力が付いています。法学部も社会科学系学部ですが、科学的というよりも観念的です。ここに郷原弁護士の特殊性があるように感じます。
今回のゴーン逮捕は、東京地検特捜部がゴーンの強欲さ、悪辣さを知るにつけ、正義感を滾らせた結果の暴走と考えると、検察官を含む法曹界に科学的考察の訓練を受けた人材を増やす必要があるように感じられます。このことは法曹界でも認識しており、法科大学院に法学部卒業者以外のコースを設けています。従って、徐々に理系学部出身の弁護士が増えることが予想されます。しかし、これを待っていては遅いように思います。もっと手っ取り早く、科学的素養があり、しかも専門的にも弁護士を上回る技術を持つ人たちを法曹界に招き入れる方法があります。それは、一定の士業の資格を持つ人たちに、法曹職の資格を与えることです。例えば、公認会計士です。公認会計士は、会社の会計知識ばかりでなく、会社法にも通じています。会社法務については、会計知識が不可欠であり、弁護士よりも公認会計士の方が力を発揮できると思われます。また、特許や意匠権、商標権、著作権などの法務については、弁護士よりも弁理士の方が力を発揮できると思われます。その他税務の法務につては税理士もしかりです。また、商品の欠陥訴訟については技術士もそうです。要するに、実業に関する実務的基盤が無いと弁護士は力を発揮できないことから、本来弁護士になる前に何らかの実務的基盤を獲得する必要があると思われます。ならば、これらの実務的基盤を持つ士業の人たちに弁護士の門戸を開いた方が早いと思われます。最初の5年間は資格を持つ分野の法律業務に限り(公認会計士なら会社法務に限る、弁理士なら特許等の法務に限るなど)、その間に一定の法曹研修を受け、民事や刑事事件も扱える法曹資格に広げていきます。10年で司法試験合格後弁護士登録した者と同一の法曹資格となるものとします。こうすれば、法曹界に専門技術が持ち込まれ、今よりも科学的な訴訟や弁護、裁判および起訴が期待できます。公認会計士から法曹資格を取得し、検察官に任命される人が増えれば、今回のゴーン事件のようなことは無くなると考えらえます。