熊本のIT企業集積計画、その前にIT教育基盤の整備が必要

熊本県では豊肥線三里木駅から熊本空港までJR線を延伸する計画を持っています。そして延伸地域にIT企業を集積することを計画しているようです。空港から近いことがIT企業にとってメリットがあるのか疑問ですが、施設と設備を安くしてメリットを出すものと思われます。東京では渋谷や五反田にIT企業が集積していますので、IT企業は混沌とした街中の方が向いている感じがします。熊本で言えば下通りや上通り周辺です。福岡との接続の良さで言えば熊本駅周辺もありかと思います。

私はJR空港線の延伸計画には大賛成ですし、IT企業の集積計画にも賛成です。熊本空港は熊本市内やJR熊本駅からバスで約1時間程度かかることが難点ですし、道路が込むともっとかかり飛行機に乗り遅れそうになることもあります。九州最大の空港である福岡空港は、福岡市の中心天神から地下鉄で約15分、博多駅からは10分もかかりません。多分日本一便利な空港だと思われます。便数も多く料金も安いことから、熊本からも福岡空港を利用する人が多数います。この状態を少しでも解消するためには、空港まで鉄道を延伸するのが一番効果的だと思われます。これまでも何度か話題になっても、これを実現する意欲のある政治家が不在で実現しませんでした。蒲島知事の創造的復興政策の賜物だと思います。

さて、IT企業の集積計画ですが、それが成功する鍵となるものがあります。それは、IT人材がいることです。福岡市も相当早くからIT企業の集積を図り、今では日本のIT企業の多くが中核拠点を設けています。それは九大や九工大という工学系の大学があり、相当能力のある人材が供給されるからです。この点で熊本を見ると大きく劣ります。それなりのIT人材の供給が期待できるのは熊本大学のみです。しかし熊本大学のIT教育も決して充実しているとは言い難く、かつ供給される人材もわずかです。そこでIT企業集積を狙うのなら、同時にIT人材の供給増加を図らないといけません。その為の手段としては、以下のことが考えられます。

(ⅰ)熊本大学工学部のIT人材育成コースを増強する。

(ⅱ)熊本県立大学にIT人材育成学部を設置する。

私は(ⅱ)が有効だと考えます。現在熊本県立大学(以下県立大学)の学部を見ると文系学部ばかりです。工業や商業が発達し、人口が多い都会では今の県立大学の学部で養成される人材が必要とされると思いますが、そうでない熊本で必要とされる人材とは少し異なるような感じがします。熊本は若者の多くが仕事を求め県外に流出していることから、メーカーなど大規模事業所の立地が求められています。その為に熊本で必要とされる人材は、工学系人材だと思われます。しかし熊本は大消費地の東京や大阪から離れており、地震もあることから、今後メーカーの大規模事業所の進出はあまり期待できないと思われます。その点でも遠隔地であることや地震があることがハンディとならないIT企業の集積は妥当であると言えます。しかし、これも人材がいてのことです。熊本では先ずIT人材養成から始める必要があります。その為にも県独自の養成機関として県立大学にIT技術者の養成学部を設置することが考えられます。熊本にはかってNTTの九州本部機能がおかれていたので、NTTと連携して進めることが考えられます。講師陣の派遣やインターンでの連携が期待できます。また、今年から熊本西高校に設けられたサイエンス情報科や高等専門学校、工業高校からの進学の受け皿となることが期待できます。特に高等専門学校の人材は、専門分野に限れば高校普通科から大学に進学する生徒よりも優秀な人材がいると考えられます。即ち、優秀なIT人材を確保できる可能性が大きいということです。ここからIT企業の集積に必要な人材が供給できます。これはIT企業集積のためには是非実現すべき施策です。