「公共放送NHK」のキャッチフレーズ、受信料徴収が目的化
NHKは最近「公共放送NHK」というキャッチフレーズを使い始めています。少し前までは「みなさまのNHK」でした。なぜ変更したか?それは公共放送であることを大義名分としてNHK受信料制度を死守するためです。
昨年6月の参議院選挙で「NHKから国民を守る党」(N国党)が1議席を獲得してから、NHK受信料に対する不満が噴出して来ました。それまで子会社に民放を持つため受信料問題には触れなかった大手新聞まで正面切って批判し始めています。民放各社は視聴者数の減少によりスポンサー収入の減少、広告収入の減少に見舞われる中、NHKは7,000億円を超える受信料収入で守られていることの不合理が浮き彫りになったからです。
NHKはN国党が参議院に議席を確保するまで、「NHK受信料は受信契約の対価である」と主張していました。これにより、受信料は公共放送の負担金であり、税金で賄うべきと言う声を退けてきました。税金で賄われることになると、財政が厳しい中でNHK予算はどんどん縮小することが明確だったからです。また予算承認権を盾に政権与党の圧力が強まります。
これに対してN国党がNHKのスクランブル化を公約として掲げ、ネットなどで支持が拡大したことから、NHKはこの主張を変更し、「受信料は公共放送負担金であり、スクランブル化には馴染まない」と言い始めました。「公共放送NHK」というキャッチフレーズはこの主張の変更に基づくもののようです。
NHKの主張は、「NHKは公共放送であるから、その運営費が受信料で賄われる正当な理由がある」ということです。しかし、NHKスクランブル化の主張が問題にしているのは、NHKの放送内容(番組)を個別に見て、公共放送と言えるものがどれだけあるかということです。政府もNHKの受信料が問題になるたびに「NHKは地震や台風、集中豪雨などの自然災害放送や選挙の際の政見放送、国会中継などの公共放送として不可欠」と説明しています。ではここで挙げられる放送は、NHKの全放送のどれだけを占めているでしょうか?10%もありません。後は民間放送と変わらない内容です。朝からドラマをやっていますし、ワイドショーもやっています。歌謡番組もやればスポーツ番組もやっています。どこが公共放送でしょうか?公共放送も行う巨大な民間放送局というのがNHKの実体です。それを覆い隠してNHK全体を公共放送と詐称し、放送の大部分を占める民間放送の運営費を受診料で徴収しているのです。このことがバレ始めたなったことから、NHKは「公共放送」と連呼し、受信料制度を死守しようとしています。
しかし、これは不可能です。受信料制度に対する国民の不満は、家計が受信料負担に耐えられないところから来ているからです。考えても見て下さい。バブル崩壊後家計の収入は増えない中で、消費税や健康保険料、年金掛け金、医療費、学費などが上がり続け、家計は食費や衣料費、日用品を切り詰めて遣り繰りして来ました。受信料は各世帯一律負担となっているため、低所得者ほど厳しい負担となっています。受信料不払い率約18%は、年間所得200万円未満の世帯の割合とほぼ一致します。年間所得200万円未満と言えば、所得から税金や社会保険料などを差し引いたら、生活保護世帯並みの収入です。ここから受信料を徴収するのが間違っています。生活が苦しいから、NHKは見ないで、受信料は払わないというのが一番納得できます。
こういう世帯からも受信料を徴収しながら、NHKの繰り越し利益は1,000億円を超えています。実はNHKの裕福さはこんなものではないのです。内部に約6,000億円貯め込んでいます。ここ数年の利益は100~200億円になっていますが、現金は1,000億円以上増えています。それは損益計算では現金が出て行かない多額の減価償却費などの費用が計上され、利益を少なくしているからです。2019年3月期の減価償却費は約808億円あります。利益(274億円)に加え、この分の現金が増えているのです(現金は1,216億円増加)。この金額が子会社分も含め約6,000億円あります。
このようにNHKにとって受信料制度は、現金を内部に貯め込む手段化しています。国民を収奪対象としてしか見ていないNHKの見直しは待ったなしです。