通信自由化が電波ジャックになった!
携帯3社の2020年3月期第三四半期の決算が出揃いました。以下の通りです(ソフトバンクは通信事業だけを集計)。
ドコモ 売上高3兆5,160億円 営業利益 7,879億円(22.4%)
KDDI 3兆9,025億円 5,770億円(14.8%)
ソフトバンク 2兆5,068億円 セグメント利益 6,445億円(25.7%)
3社合計 9兆9,258億円) 20,094億円(20.2%)
この結果を見ると、携帯3社は相変わらず国民収奪を続けていることが分かります。菅官房長官の4割値下げ発言など無視であり、総務省が何回か実施した値下げ対策は全く効果が出ていないことが分かります。日本郵便の副社長になっていた元総務次官に総務省の現役次官が内部情報を流していた事件と同様なことが、携帯3社と総務省で行われ、対策の骨抜き化が行われていたと思われます。
2019年10月からの消費税2%引上げで家計負担が増え、その後家計支出は5%程度落ち込んでいます。本来これを防ぐのが携帯料金の値下げでした。携帯3社の営業利益率はこれまで20%を超えており。日本の全産業においてトップクラスの水準にあります。携帯電話という国民のライフラインである公益事業で、これだけ収奪されたら家計はたまりません。日本の家計が苦しい最大の原因は、この携帯3社の収奪にあります。一方携帯3社のうちソフトバンクでは、親会社のソフトバンク・グループ(SGB)がこの有り余る携帯料金収入を使って巨額のM&Aを繰り返しました。また10兆円ファンドを作り、巨額の不良投資を行ったのは衆知の事実です。次のファンドにはSBGが数兆円出資するという報道ですが、これもソフトバンクの携帯料金収入が原資になります。このように家計のお金が携帯料金として吸い上げられ、海外に流れる一方、出鱈目な投資によって消え去っているのです。
1985年の電電公社民営化以来通信事業の自由化が進められて来ましたが、その目的は国民の通信費低減だったはずです。それが携帯3社に通信事業の免許を与えた結果、通信回線が国民収奪手段と化しています。即ち、携帯3社に電波ジャックされたのです。今や携帯電話は水や電気、ガス並みに生活に不可欠なものとなりましたから、携帯3社の言い値で契約するしかありません。そこで携帯3社が競争を捨て、協調して3社の利益の確保を図れば、このような状態になるのは自明のことです。これは総務省の旧郵政グループが携帯3社と結託した結果ですが、公正取引委員会にも大きな責任があります。これ程寡占の弊害が明確であり、かつ家計が巨額の損害を受けているのに、何もしなかったのですから。この間公正取委員会は、十八銀行と親和銀行の合併に注文を付けました。地方では地銀が1行でも経営が厳しくなるのは確実なのに、将来不可欠な2行の合併に注文を付けて何になると言うのでしょう。まるで教科書通りの仕事ぶりです。携帯3社の寡占にメスを入れれば、2兆円以上の値下げ効果が期待できました。どちらを取り組むべきかは、明白でした。公正取引委員会がこの判断を誤ったことで、家計はこの間何兆円も余計に携帯3社に吸い上げられました。総務省だけが槍玉に挙がっていますが、公正取引委員会が何もしなかった罪は同じくらい大きいと思います。
政府や総務省は楽天の営業開始までお手上げの態度ですが、それはおかしいと思います。携帯3社がこれだけ利益を上げられるのは、通信回線のコストが低下しているにも関わらず、携帯回線使用料を高く設定し、利益を携帯回線利用料に潜り込ませているからです。だから格安スマホの料金も下がりませんし、携帯3社は格安スマホ会社に回線を貸し出しても今の利益を確保出来るようになっています。従って、政府としては携帯電話回線のコストを厳格に計算させ、それに一定の利益を載せた料金設定しかできないように法定すればよいのです。
昨年10月の消費税引き上げの効果はこれから本格化してきます。それは今回の消費税引上げでは食品が8%に据え置かれたため、主婦などはそれ程消費税引上げの影響が実感できていないのです。しかし、時間が経てば家計には確実に影響が出ていることが分かり、支出を抑制して来ます。従って、消費税引上げの影響はこれからが本番です。これを和らげるためには、携帯電話料金の大幅引下げしか方法はありません。
政府、総務省および公正取引委員会には本気の取り組みをお願いします。