黒川検事長定年延長は安倍首相の違法行為

黒川東京高検検事長(黒川検事長)の定年延長が問題になっています。検察庁法22条に検察官の定年は63歳と規定してあるのに、安倍政権は半年の定年延長を決定したのです。黒川検事長は2月7日で満63歳になり、定年退職になるとばかり思われていました。

黒川検事長と言えば、安倍政権の中で法務省官房長を約5年、事務次官を約2年勤め、その間2015年の小渕優子議員の政治資金規正法違反容疑、2016年の甘利明議員のあっせん利得処罰法違反容疑および2018年の森友事件における財務省近畿財務局公文書改ざん事件が不起訴になったことへの貢献が大きかったと言われています。いずれも安倍政権に貢献のある人物に関する容疑であり、安倍政権としては何としても不起訴にしたい事件でした。このため、安倍政権は、黒川検事長を法務官僚トップの検事総長にすることで報いるだろうと言われていました。

従って、黒川検事長が2月7日の満63歳の誕生日を以て退官するとの新聞報道が出たときには驚きが広がりました。しかし、その数日後に黒川検事長の定年延長の報道があったのです。「え、そんなことができるの?」と思って記事を読むと、検察庁法には検察官の定年は63歳と書いてあるけれど、国家公務員法にはこれを延長することができると規定されているから、国家公務員法の規定によったというのです。でも法律の知識がある人なら、この説明がおかしいことは直ぐ分かります。検察庁法は、国家公務員法の特別法であり、検察庁法の規定が優先することは自明だからです。これに対して森法務大臣は、検察庁法は定年による退官の規定であり、今回は定年の延長ではなく勤務の延長であり、これについては検察庁法に規定がないので、国家公務員法の規定によった、説明しています。これは結果を正当化するための詭弁であることは誰にでも分かります。森法務大臣は、ゴーン被告のレバノンでの記者会見を受けて、「潔白というのならば、司法の場で正々堂々と無罪を証明すべき」と発言し、被告人は無罪の推定を受け、起訴した検察官が有罪を証明しなければならないという刑事裁判の基礎原則を逸脱した発言をし、日本の法曹資格者の評価を暴落させています。

その後、検察庁法制定の審議の過程で検察庁法の立法趣旨として、検察官は職務の特殊性に鑑み他の国家公務員と異なり63歳で定年退職することを明確にするものということが述べられていることが明らかとなり、森法務大臣の詭弁は通じなくなりまました。そこで次に安倍政権が持ち出したのが政府解釈の変更でした。検察庁法の立法趣旨を認めたうえで、安倍政権として解釈を変更して、検察官にも国家公務員法が適用され、勤務の延長ができることとしたというのです。これは出鱈目なやり方です。法律は、国会で立法趣旨に基づいて審議され承認されるわけですから、解釈を変えるということは立法趣旨を変更するということです。これは検察庁法の改正と同じことであり、国会に改正案を提出して審議し承認を得る必要があります。これをせずに解釈で変更することは安倍政権が勝手に法律を改正したことを意味します。

なぜこういうことが出来るのかと言うと、安倍政権が平均値政権だからです。平均値ということは、学力は決して高くないということであり、正解に拘らないということになります。通常学力の高い人の意思決定では、何が正解なのかを考えます。そして幾つかの政策の中から、正解を睨みながら実現可能性を考慮し、政策を決定します。しかし、安倍政権の場合、先ずは正解を見つけるという習慣がないのです。正解なんか糞くらえ、なのです。だから、とんでもない決定を平気でします。

黒川検事長の定年延長は、検察庁法違反であり、国家に損害が発生しています。速やかに裁判所で議論する必要があります。司法を統括する法務省がこれらの法律違反を主導していますから、その傘下にある裁判官が違法という判決を下せるわけがありませんか?安倍政権になって日本は、ここまで落ちるかという知的レベルまで落ちています。