高市早苗議員は日本のサッチャーになれるか?
私は、昨年9月の安倍内閣改造前から注目は総務大臣人事だと見ていました。消費税2%引上げが家計に与える影響を小さくするには、携帯料金とNHK受信料の引下げが不可欠だからです。携帯電話料金については一昨年菅官房長官が4割値下げすべきと発言しましたが、下がるどころ逆に携帯3社の利益は増加しました。原因は値下げ策を検討する総務省の所管部署が携帯3社の応援団であり、また値下げ策を審議する有識者会議のメンバーの殆どが携帯3社の利益の恩恵に預かっているからです。そのため出て来る値下げ案は骨抜きになるようなものばかりでした。本来なら総務大臣の強力な指導力が必要なのですが、新任の大臣では荷が重かったようです。そこで任命されたのが高市総務大臣でした。高市総務大臣は2014年9月から約3年間総務大臣を務めており、総務省の業務に精通し、幹部の多くを知っていました。そこで速やかにこの2つのテーマに取り組めると判断されたものと思われます。
高市総務大臣は早速昨年11月、NHKにネット同時配信に関する費用の見直しなどを求めました。昨年5月に放送法が改正され、今年4月からネット常時同時放送ができるようになりましたが、条件として受信料の値下げなどが求められました。これに対してNHKは2019年度は消費税2%の引上げ分をNHKが負担し、今年度は更に2.5%受信料を引き下げることで乗り切ったのです。従って、NHKとしてはまさかここになって費用見直しなどを求められるとは思っていなかったと思います。しかし4月からのネット配信開始まで時間がなく、ネット配信費用を抑制することで決着し、残念な結果となりました。
その後高市総務大臣は、総務省から郵政副社長に天下っていた元総務次官に現役の総務次官が省内で検討されていた日本郵政処分の情報を秘密裏に伝えていたことを問題とし、当該事務次官を更迭しました。これは総務省内でも驚きだったでしょうし、高市総務大臣にとってもストレスのかかる出来事だったと思われます。私はこの更迭の真の原因は、当該事務次官が通信部門出身で、携帯料金値下げの障害になっていたからだと考えています。
携帯料金に関しては昨年11月日本通信からの通信回線使用料値下げの裁定申請を受け、今年2月4日日本通信の申請を認める裁定を下しています。この結果MVNOの通話料金は大幅に下がることになると考えられます。このように総務大臣の指導力があれば、総務省管轄部署や有識者会議を通さなくても携帯料金は下げられるのです。
高市総務大臣がBSフジのプライムニュースに出演し、携帯料金問題について語っているのを聞きましたが、実務内容までよく理解し、大局観もあり、頼もしく感じました。また難解な内容を軽妙な関西弁で分かりやすく説明し、頭の良さを感じました。
最近では、黒川検事長の定年延長に関し、森法務大臣が国家公務員法の定年延長規定を検察官にも適用があるように解釈を変更し、その決裁は口頭で取ったと述べたことに対して、「総務省では、原則、電子決裁することが規則で定められていて、私も電子決裁をしている」「会議への出席などは口頭で了解を得る場合もあるが、これは決裁ではなく口頭了解と呼んでいる」と述べ、安倍首相のお友達でも公務は別という良識を示しました。
また2018年10月、NHKの番組に日本郵政が抗議し、経営委員会がNHKの上田会長を会議に呼び問い質した件で、当時委員長代行だった現委員長の森下俊三氏が番組を批判する意見を述べ、NHKの番組制作に介入したとされる件では、国会で森下委員長は「状況や経緯を確認するため会長も出席し、自由に意見交換した。番組や動画について意見を述べた」「具体的な制作手法は指示しておらず、NHKの自主自律や番組編集の自由を損なう事実はない」と強調し、番組介入の意図は否定しましたが、高市総務大臣はこの説明に対し、「答弁を聞いても私自身が十分に理解できない面がある。説明責任をより的確に果たしてほしい」と述べ、ここでも良識を示しています。
このように高市総務大臣はなかなかの硬骨感です。
この高市総務大臣の真価が問われるのは、この4月以降となります。1つは携帯料金の値下げ効果を出せるかどうかであり、もう一つはNHK受信料問題です。携帯料金に関しては、楽天モバイルが通信量無制限2,980円のプランを発表しましたが、多くのエリアでKDDIのローミングが必要であり、ローミング料が高額な為、この恩恵を受けられる人は僅かとなります。ここで浮き彫りになったのは、携帯3社の通信回線使用料(ローミング料)が異常に高いことです。日本通信が申請した通信回線使用料の値下げを求める裁定申請を高市総務大臣が認めたため、この通信回線使用料も下がることが予想されますが、高市総務大臣には、通信回線使用料をコスト+5%の利益に設定するルール作りが求められます。そうすれば携帯料金による家計収奪は終わるはずです。
また、NHK受信料問題については、4月から総務省に有識者会議を置き新しい制度の検討を開始するとの報道です。その報道によるとドイツの公共放送制度に倣い全世帯から受信料(多分負担金という名称)を徴収することが考えられているようです。昨年7月の参議院選挙でN国党が1議席を獲得したことにでも分かるように、この問題は国民の大きな関心になっています。報道の通りだとしたら、自民党がなくなると覚悟した方が良いと思います。NHKの行き着く先はスクランブル放送化しかありません。
この2つのテーマを解決したら、高市早苗議員は日本のサッチャーとして首相になってもおかしくないと思います。