コロナ経済対策として携帯料金5兆円の引下げを

コロナウイルスの感染拡大で、観光業を中心に事業や生活を維持できない人たちが続出しています。その他の事業でも売上が減少しており、まだ底が見えません。コロナウイルスが日本国内で収束するには少なくともあと3カ月はかかり、海外からの観光客が戻るにはあと1年はかかると考えられます。そこで緊急経済対策が検討されているようですが、先ずは収入が絶たれた状況の旅館、ホテル、土産物業、観光バスなどの事業者や従業員、非正規雇用者などに対して、無条件に生活資金を給付する収入対策求められます。それから経済対策です。

経済対策としても、大幅な金融緩和・低金利の元では、金融政策はあまり効果がありません。そこで効果的なのは、家計の支出を減らしてやることです。

最も効果的なのは、昨年10月に引き上げた消費税の引下げです。引き上げ実施条件がリーマンショック級の経済悪化がないことでしたから、事後的にそれに相当する状況に見舞われたことから、消費税2%の引上げを停止することは理論的に可能です。ただしコンピュータシステムの対応で時間がかかるという問題があります。

そこで考えられるのが消費税2%に相当する携帯料金5兆円の引き下げです。この問題は2018年に菅官房長官が4割値下げ(売上高13兆円×4割=5兆円)を求めたにもかかわらず、全く下がっていません。総務省と有識者会議が値下げ策を出すのですが、結果はいずれも骨抜きとなるばかりか、はかえって携帯3社の利益を増加させています。これは総務省の担当部署と有識者会議のメンバーが携帯3社の利益の恩恵に預かっており、実効性ある値下げ策など出す気がないからです。政府は楽天の新規参入待ちの態度ですが、基地局の整備状況を考えれば、楽天は当面大手3社(この場合KDDI)の通信回線を借用せざるを得ず、この使用料が異常に高い(1ギガ500円、10ギガで5,000円。10ギガで通信3社の無制限プランより高くなる)ことから、楽天の料金は結局割高となり、家計にはメリットがありません。従って、今年も携帯料金は殆ど下がらず、家計の携帯料金支出は減少しないばかりか、むしろ高額料金への誘導で増加することが予想されます。

そもそもベースとなる携帯料金は、通信回線のコストと運営費を合わせた通信の総コストを加入者数で割って算出されるものです。従って、通信量とは無関係に決まります。だから楽天は、この考え方に基づき通信無制限で月2,980円と設定しています。携帯3社も同じような料金体系になるはずなのに、通信料が多い場合の料金を少ない場合よりも割安に設定して、高額料金へ移行させようとしています。この結果、今年度も携帯3社の売上高(営業収入)は増加し、営業利益は膨らむはずです。

携帯3社の2019年3月期の決算は、売上高約13兆円、営業利益約3兆円、営業利益約20%です。生活インフラである通信回線を利用して家計からお金を吸い上げている実態が分かります。これに総務省と有識者会議および公正取引委員会が加担しているのです。営業利益約3兆円は、テレビ広告費や販売代理店への販売促進費などを潤沢に使い、圧縮した額です。これらの費用を押さえれば、営業利益は5兆円出ます。この5兆円は家計搾取の結果であり、家計が困窮していている今こそ家計に返還させるべき金額です。それでも、携帯3社の決算は、売上高8兆円、営業利益4,000億円、営業利益率5%という数字は可能です。これは同じ公益企業である電力9社の営業利益率に相当します。

ではどうやって下げさせるかということになりますが、通信回線のコストを透明化し、通信回線コスト+5%の利益に設定させ、これに基づいて料金を設定する仕組みにすればよいのです。他の公共料金はこうなっているはずです。こうして決めた通信回線コストをMVNOへ貸し出す際の回線使用料とすれば、携帯3社とMVNOは同じ土俵でサービス競争ができます。今の状態では、携帯3社は通信回線を保有していればぼろ儲けできることになります。電力は送電線部門を分離し、発電業者は同じ条件で使えるようになっています。携帯電話も同じ仕組みに出来るはずです。

家計が困窮している今やらなくていつやるのでしょうか?