SBGの資産売却、金額が大き過ぎて買い手がいない?
ソフトバンクグループ(SBG)は3月23日、資産4兆5,000億円の売却を行うと発表しました。このうち2兆円で自社株買いを行い、残りは負債削減や手元資金に充てるようです。SBGによると保有する株式の時価総額は27兆円あり、現金は1.7兆円あることから、会社の健全性や安全性には何ら問題ないということです。
今回の資産売却は、株価の大下落(2月12日5,781円→3月19日2,609円)に見舞われたことが原因です。株価下落がSBGの資金繰りへの懸念から来ているものと考え、資金は資産を売却すればいつでも確保できることを示そうとしたものと考えられます。それによりSBGの株価は3月25日には4,242円まで上がっていますから、狙いは一応成功したと言えます。しかし、売却は今後4四半期に渡ってとなっており、資産の売却はそう簡単ではなさそうです。
SBGの資産は株式が殆どであり、そのうちアリババ株が18兆円程度を占めると思われます。次に大きいのがソフトバンク株で約3兆円程度です。その他Zホールディング、スプリント、アームなどがあります。問題は株式の大部分を占めるアリババ株です。SBGの孫社長は、アリババは成長余力があるのでできるだけ売りたくないと言っていましたが、それだけが処分しない理由でしょうか?SBGのアリババ株の保有割合は約29%となっています。そしてアイババ株の時価は約60兆円です。そうなると例えば5兆円分くらい取得しても何ら経営に影響力を及ぼせないことになります。アリババは配当していないようですので、そんな株を5兆円出して買う人がいるでしょうか?このようにアリババ株は巨額過ぎて、普通の投資家には手が出ないのです。60兆円という時価総額は、市場で売買されている僅かの株式の株価に発行株数を掛けて算出した数字のマジックだと考えられます。アリババ株を大量に購入する場合、経営に影響を与えられる株式の割合は51%、34%となりますが。その金額は約30兆円、約20兆円であり、1企業ではほぼ不可能です。このようにアリババ株は企業買収の対象にはなり得なくなっています。その結果、多額の処分は難しくなっていると言えます。それはアリババが昨年11月香港市場に上場したときの調達額が約1.2兆円だったことからも分かります。上場時でもこれだけの売買しかできないのですから、一般の取引でこれ以上の金額の売買は簡単ではありません。
むしろ売却が容易なのはソフトバンク株だと考えられます。同社は通信部門の収入が好調であり、キャッシュフローが豊かです。SBGはソフトバンク株の約66%を保有しており、51%まではいつでも売却する意思があると思われます。ここまで約15%売却しても金額は約1兆円です。約30%売却すれば約2兆円となります。これもそんな金額で誰が買うのかという問題がありますが、ソフトバンクに自社株買いさせるという手があります。30%売却すると、ソフトバンクからの配当(年間約2,600億円)がSBGの現金収入の大きな割合を占めていることから、SBGの今後の現金収入が減少し、毎年資金繰りのため株式の売却が必要となります。従って、SBGとしては、ソフトバンク株の売却は15%約1兆円に留めたいものと思われます。そうなるとTモバイルと合併することになったスプリント株の売却が遡上に上ってきます。SBGのTモバイル株持ち分は約24%であり、これは全部処分しても約6,000億円程度にしかなりません。こうなるとアリババ株を約3兆円売却する必要が出てきます。果たして3兆円分の買い手がいるかどうかが問題です。
このようにSBGは計算上巨額の株式資産を持つのは事実ですが、巨額過ぎて簡単に処分できないという現実があります。それでもSBGは投資以外の事業は行っていない為、新規の投資をしないのであれば、保有株式を年間数千億円程度売却すれば、存続には問題ないと思われます。しかしそれでは魅力が無いとして株価(時価総額)は大幅に低下するかも知れません。
*これは投資資料でありません。個人的興味からSBGの今後を考察したものです。