SBとKDDIの5G合弁会社は通信の寡占化につながる

4月1日の報道によると、ソフトバンク(SB)とKDDIは、地方の5Gネットワークの早期整備のために合弁会社「5GJAPAN」を設立したとのことです。これはただでさえ、通信3社(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク)の協調的寡占政策により高い料金を払わされている消費者に更に重い負担を負わせることになりますので、監督官庁である総務省と独占禁止政策を担う公正取引委員会は、速やかに停止を命じるべきです。

通信3社は、2019年3月期決算で売上高約13兆円、営業利益約2兆8,000億円、営業利益率約21%という超過利潤を上げています。これは携帯電話という国民のインフラを利用して、家計からお金を巻き上げている構図です。そもそも電波は国民の財産であり、こんなことが許されていい訳がありません。同じ公益企業である電力9社の同時期の決算は売上高約19兆円、営業利益約9,500億円、営業利益率約5%です。この2つを比較すれば、通信3社が如何に公益企業の規範を逸脱しているかが分かります。その有り余るキャッシュをソフトバンクグループ(SBG)では巨額の海外M&Aや10兆円のベンチャーファンドに使っています。即ち、家計の資金が海外に流出しているのです。更にSBGは殆ど税金も払っていません。まるで日本の家計を財布代わりに使い、そのために日本に本社を置いているようなものです。

2018年8月、菅官房長官がこの実体に気付き、「携帯料金は4割下げられる」と発言しましたが、その後全く下がっていません。総務省と有識者会議が値下げ策と称して対策を発表するのですが、全部骨抜きです。総務省の担当部局と有識者会議のメンバーは、携帯3社の利益の配分に預かっており、自分らが不利益を被る実効力のある対策を出す訳がありません。

そういう訳で第4のMNOとして楽天の参入に期待するしかなくなり、楽天はこの4月からサービスを開始したのですが、基地局が少なく、多くをKDDIのローミングに依存しています。その結果、2Gを上回る通信量では1G当たり500円の通信費用が掛かることになり、10Gでは5,000円を超えてきます。KDDIは無制限で5,000円を下回る料金を設定しており、楽天のローミング料が如何に高額に設定されているかが分かります。この通信回線使用料が高額に設定されていることが、携帯3社が高収益になっている原因です。このため、MVNOは安い料金設定ができないし、MVNOの通信料が増えれば携帯3社は儲かる仕組みとなっています。そもそも通信回線のコストは、設備投資額と運営費用を利用者数で割って算出されるもので、通信料に応じて決まるものではありません。楽天の料金はこの考え方で一律月2,980円となっています。これは通信回線の設備投資コストと運営コストの合計を加入予定者数300万人で割って算出したものと思われます。もし携帯3社がこの方式で歳出すれば、1,000~2,000円代となるはずです。通信3社とMVNOは、この通信回線コストを共通の基本コストとして、後はサービスの内容で競うべきものです。電力会社は、この4月1日から送電線会社を分離し、発電会社が共通のコストで使うようになっています。携帯3社の今の状態は、回線を保有しているだけでぼろ儲けの状態です。

今回のSBとKDDIの5G合弁会社設立の狙いは、楽天が参入して4社になった通信業界を3社に集約することです。これでSBとKDDIは5Gの通信網を共同で整備・管理し、NTTドコモ、楽天に対して優位な立場に立ち、また3社の協調寡占体制に持ち込むのが真の狙いです。これでは楽天の参入を許し、MVO4社体制にして競争を促進した意味がありません。こんな見え見えの政策は、早い段階で潰しておくべきです。5G通信網は、異業種の大企業や地方の有力企業が中心となって整備し、それをインターネットのように相互開放する形で整備すべきだと思います。今のように携帯3社が通信回線を独占し、3社が協調して家計を搾取する事態は避ける必要があります。

今コロナ感染の蔓延で、日々の収入が断たれた人たちが多数発生しています。また感染の拡大を防ぐため、学校が休校になったり、会社がテレワークを実施したりで、通信料が増大し、今後携帯3社の収入が膨らむことは間違いありません。これは家計が苦しくなることを意味しており、公益企業がどさくさに紛れて家計搾取に励んでいることを意味します。こんなことは社会的に許されない訳で、今こそ通信料を値下げさせ、携帯3社の利益を電力並みに下げる必要があります。その為には通信回線使用料をコスト+5%利益程度まで下げさせることです。総務省、公正取引員会は総力を挙げてこれの実現に尽力して頂きたいと思います。