PCR検査抑制は医療行政者の独断暴走

コロナウイルス感染の有無を調べるPCR検査がさいたま市では2カ月で171件にとどまったことについて、市の保健所長は10日、記者団の取材に「病院が溢れるのが嫌で(検査対象の選定を)厳しめにやっていた」と明らかにしたとの報道です。

多くの国民がそうではないかと思っていたことですが、現場の責任者がこれを認めたとなると責任問題が出てきます。これまで日本で感染症対策を担う国立感染症研究所や厚生労働省は、検査する体制が整っていないため検査ができないと説明して来ました。使えるPCRの数や施設、要員が不足しているため検査数が少なくなっているという説明は、聞けば納得できるものでした。これがこの保健所長の発言で、病院が溢れないように考えてPCR検査を抑制していた実態が明らかとなりました。病院が溢れるとは、感染症患者隔離病床が足りなくなること、および検査を求める人で病院が溢れること、を指していると思われます。

4月に入りコロナ感染が急増し、ついに4月7日には7都府県に緊急事態が宣言されました。これはこれまでコロナ感染の疑いがあったてもPCR検査を受けさせなかった結果、コロナ感染者が市中に留まり、感染者が拡大したためと考えられます。感染症対策としては、感染者を早く見つけ出して隔離することが鉄則です。だからダイヤモンドプリンセス号では下船が許されませんでした。なのに日本では、コロナ感染が疑わしい人でもPCR検査を受けさせずに自宅に追い返していたのです。その結果、家族などの接触者にコロナが感染して行くのは当然のことです。今では感染者を特定するのが困難なくらいの感染者数になっていると考えられます。緊急事態宣言は出されましたが、外出の自粛が求められるだけで、通勤風景や生活に殆ど変化はありません。通勤電車や地下鉄には感染者が乗り合わせていると思われます。だとすれば感染者数は当面拡大するはずです。収束の目途も立たないと思われます。

このことは感染症対策の専門家なら予想できたはずです。もし病床が足りない、検査を求める人で病院が溢れると言うのなら、韓国のように軽症者はホテルなど病院以外の施設に収容する、ドライブスルー検査を行うなどの対策が取れたはずです。

今回の場合、感染症対策の専門家たちは自分らの考えに固執し、これらの方策を全く採りませんでした。これらは自分らの専門外、管轄外というのなら、そのことを政府に提言することはできたはずです。そうすれば大阪府が募集した軽症者隔離用の居室として21,000室の応募があったことで分かるように軽症者の隔離に使うホテルの部屋1万室くらい確保できました。それをしなかった点において、今の状態にした責任の多くは、政府の感染症対策専門家、医療行政者にあると考えらえます。また専門家は専門知識はあっても総合的な判断力は劣ることが多いことを考慮せず、全面的に頼り切った安倍首相に最大の責任があるのは当然です。と言うより安倍首相であることが感染拡大の最大の原因と言って良いと思います。