熊本城の石垣、復元ではなく復旧を急ぐべき

今コロナウイルスの感染拡大で、世界がコロナウイルス戦争に突入しています。世界を滅ぼすには高価な核兵器は不要で、ウイルスをばらまけばよいということが分かりました。これから世界は核兵器よりウイルス兵器の開発に力を入れるようになるかも知れません。

この突然のコロナウイルスの登場で、世界経済が混乱に陥っています。ニューヨークダウもあっという間に約29,000ドルから約19,000ドルに約35%も下落してしまいました。日経平均株価も約24,000円から約16,500円へ約32%下落しました。その結果何百兆円という資産価値が消失しました。それ以上に外出禁止や旅行禁止などにより人の往来が途絶え、収入が断たれた人たちが多数出ていることが大問題です。それらの人たちに対しては国が生活費を全面的に見ることが必要です。日常の生活を取り戻すのに少なくとも半年はかかります。国の習熟度が問われています。

私の人生で天変地異により恐怖を感じた経験は3回です。2011年の東日本大震災、2016年の熊本大地震、そして今回のコロナウイルス禍です。天変地異以外では1995年に起きた地下鉄サリン事件も地下鉄に乗るたびに怖かったのを覚えています。目に見えない恐怖と言う意味では、今回のコロナウイルス禍は地下鉄サリン事件の恐怖に似ています。地下鉄サリン事件の2ヶ月前には転変地異である神戸地震が起きています。

昔は「天災は忘れた頃にやって来る」(物理学者寺田虎彦の言葉)と言われましたが、最近は発生間隔が短くなり、定期便になっている感があります。毎年の大雨や台風による被害は恒例化しています。こうなると毎年の予算に災害復旧費用を計上しておく必要があるかも知れません。

私が今回のコロナウイルス禍前から懸念しているのは、関東大震災です。1925年の大正関東大震災から95年経過しており、いつ起きてもおかしくない時期になっています。関東大震災が起きると、東京を中心とした関東地方の復旧費用に膨大な金額がかかり、その他の地方の公共工事は一切停止して予算をその復旧に集中投下することになります。これによりその間地方の公共工事は全面的に停止されます。同時に中止になる公共工事が多数出るはずです。

私は熊本出身なので、熊本城の石垣復元工事がこれにより中止になる可能性が大きいと考えています。熊本城の石垣は、2016年の熊本大地震で多数の個所が崩壊しました。熊本城とそれが乗る石垣は、来年(2021年)春までには全面復元されるようですが、その他の石垣は20年かけて復元する計画とのことです。ここでは「復元」という言葉となっていることに注意して下さい。復元とは、壊れる前の状態、作られた当時の状態に戻すことを表す言葉です。即ち、熊本城の石垣は、壊れる前の状態に戻す方針で工事が進められるということです。石を1つ1つ元通りに積もうというのですから、時間がかかるのは当たり前です。

先ほど関東大震災はいつ起きてもおかしくないと述べました。またこれが起きた際には、これからの復旧に日本の予算の大部分が投入され、地方の公共工事は全面的に停止または中止になると述べました。そして熊本城の石垣の復元工事は真っ先に中止になると考えられます。何故なら、熊本城は歴史遺産としての価値は低く、それだけのお金をかけて復元する価値はないからです。考えても見て下さい。熊本城天守閣は鉄筋コンクリート造りです。歴史遺産としての価値は0です。価値があるとすれば戦国時代の城の外観を模して作った近代建築としての価値です。また石垣もこれまで2回の大地震で崩壊したことが確認されており、2016年の地震で崩壊した石垣は、このとき積み直した部分が多いと言われています。ということは、復元というのは過去の地震で崩壊し積み直した石垣に戻すということであり、熊本城が作られた当時の石垣に戻すことではないことになります。これに価値が無いことは誰でも分かります。また、人の目に留まらない石垣を元通り復元して何になるのかということも考えるべきです。熊本城の石垣で人が石の1つ1つまで見るのは、天守閣の石垣やそこに至る桝形の石垣、武者返しの2様の石垣などほんの一部です。この部分を復元するのは分かりますが、空堀に面し人が近づけない石垣まで復元する必要はありません。

現在企業では3年計画が主流です。長期計画でも5年がせいぜいです。それはそれ以上先は見通せないからです。自治体の場合、収支は住民数で決まるでしょうからもっと長期の計画を立てるかも知れませんが、20年間の長期計画はないのではないでしょうか。これは絵に描いた餅といっても良いと思います。

やはり確実にやり遂げられる方策を選択すべきです。日本が関東大震災のような大災害に見舞われた場合、熊本城は歴史遺産としてお金を掛けて保存する対象から除外されます。歴史遺産として保存する対象の城は、築城当時の天守閣が現存する12城に限られるはずです。その他の城は観光資源として民間の知恵を導入して活用する方向となります。それまでに熊本城としては国の資金を集中的に獲得し、短期間で石垣を復旧すべきだと思います。ここで言う復旧は、崩壊前の石垣に戻すことは考えず、速やかに石垣を積み直すことです。そうでないと関東大震災があった場合、熊本城の石垣復元工事は中止となり、コンクリート壁または土塁で十分ということになると思います。

私は、熊本空港民営化後の次の民営化のターゲットは、熊本城だと考えています。