現金保有税を導入して消費税を廃止すればよい

コロナ経済対策で国債増発が問題になっています。政府が休業要請しても休業補償をしないのは、補償金が膨大な額になり、それは国債を増発して賄うため、国債残高が膨らむからです。国債残高が膨らんでも、日銀が保有する限り、全く問題がないことはこれまでも述べました。日銀が国に返済(償還)を迫ることはないからです。それは、日銀は国の子会社(55%保有)であり、実質的に国と一体だからです。即ち、国債の債務者(国)と債権者(日銀)が実質同じなのです。だから最終的には棒引き(国と日銀の会計帳簿から同等額を消し去る)されることが予定されています。財務省は分かっていながらこれ以上国債残高は増やせないと言うのは、そう言い続けないと税金は無しにして国債を発行すればよいではないか、という極端な方向に行く可能性があるからです。こうなるといずれ国の財政秩序が保てなくなり、諸外国から信頼を失くします。その結果、円が暴落し、輸入物価の高騰、インフレを招きます。だから、国債の発行には節度が必要なのは事実です。

しかし、今はほとんどの国民にお金が流れなくなった状態なので、国から国民に直接お金を流す必要があります。国債は本来こういうときに使うものです。国が休業命令を出して休業補償をすると(例えば英国の様に従業員の収入の8割を補償)、100兆円くらい必要となるかも知れません。100兆円は1年後とか経済が回復したときに、政府の債務残高および日銀の債権残高から消し去ればよいのです。日銀は誰かからお金を借りて100兆円の国債を購入した訳ではなく、日銀券(紙幣)を印刷して(*間違い。コンピュータ上で日銀券を当たに増やすだけ。)購入しただけですから、損するのは印刷代くらいです。そう考えると、その他約500兆円の日銀保有国債も帳簿から消してしまえばよいように思えます。そうすれば日本の国債は個人や金融機関が持つ約500兆円となり、GDP比約100%と米国並みの数値となります。

しかしそうなっても、日本の2020年度の国家予算約100兆円に対して税収は約60兆円で、残りを国債で賄う歳入状況では、また国債残高が累増して行きます。日銀債務の棒引きは、税収で歳入を賄う目途が立ってから行う方が良いのです。

そこで考えられる税制改革は、現金保有税を創設して、消費税を廃止することです。安倍政権が誕生して日銀が市場から国債を購入し、2019年末で日銀は893兆円の国債残高の内約460兆円(46.7%)を保有しています。ということは460兆円のお金を刷ったということですが(*間違い。日銀は銀行から差し入れられた準備預金などで国債を購入し、新規の日銀券は発行していない)、そんなにお金が出回っているようには見えません。通常お金が溢れると物価は上がりますが、殆ど上がっていません(2019年度消費者物価上昇率0.6%)。ということは、お金は出回らず貯め込まれているということです。2019年度の家計の金融資産は約1,900兆円となっています。そしてこのうち約1,000兆円が現金資産となっています。日銀が刷った紙幣は流通に回るのではなく、貯金されていることを意味します。これでは物価も上がらないし、経済も活発化しません。税収も増えません。こんな中で消費税を2%引上げ、家計から約5兆円を吸い上げるのですから、消費が落ち込むのは当然です。

経済を活発化し税収を増やすには、この動かない現金資産に課税すればよいのです。不動産には固定資産税がありますし、自動車にだって保有税(自動車税)があります。従って、同じ資産である現金に保有税がかかるのは全くおかしくありません。現在では資産は現金で持つのが一番コストがかからないために、現金残高が膨らんでいるのです。これに課税して、他の資産に変われば、そこで売買が生じ、経済が活発化します。それが不動産や車なら、保有税が生じます。有価証券なら取引税やキャピタルゲイン課税が発生します。ともかく現金で持っている限り、現在の低金利下では税収は生じないのです。

現金は家計の他に企業の内部留保として500兆円あると言われています。これも対象です。個人と企業の現金資産合わせて1,500兆円あることになりますので、1%課税するとして15兆円の税収となります。更には有価証券などのその他の金融資産にも課税します。それは売買されなければ現金資産と同じだからです。またキャピタルゲイン課税は分離課税だと20%で総合課税に比べ有利になっていることもあります。そうなると個人金融資産1,900兆円と法人内部留保500兆円、合わせて2,400兆円に1%課税することになり、税収は24兆円となります。この替わり消費税(約25兆円)を廃止します。これにより商品売買が活発化し企業所得が伸び、法人税や所得税が増加します。その結果、税収は100兆円程度になります。(尚導入に当たっては、1人当たり現金1,000万円までは非課税にするなどの工夫が必要になります。)

これでほぼ歳入と歳出が均衡します。ここで日銀保有の国債債権と政府の国債債務を相殺します。これで国債残高は民間保有の約440兆円のみとなり、良好な状態となります。こうなると今回のコロナのような状態になっても躊躇なく巨額の国債を発行できます。今後日本では関東大震災の発生が確実視されており、早くこういう状態を作ることが必要となっています。