検察庁法改正への抗議のツイート、「安倍さん、ズルしないで!」ということ
5月8日に、野党欠席のもと自民党、公明党、日本維新の会が「検察庁法改正案」の審議を始めたことに対して、芸能人や文化人を中心とした「#検察庁法改正案に抗議します」のツイートが7日夜の段階470万件に達しているとの報道です。
今回の法案は、国会公務員の定年延長に歩調を合わせる形で検察庁法を改正して、検事総長を除く検察官の定年を63歳から65歳に引き上げ、63歳になったら検事長・次長検事・検事正などの幹部には就けない役職定年制を導入するのに加えて、定年を迎えても、内閣や法相が必要と認めれば、最長で3年間、そのポストに留まれるとするものです。この内容自体は他の国家公務員並みにするということであり、問題ないと思います。ツイートしている人たちの意図は、この法案の内容を問題にしているのではなく、この背景にある黒川東京高検検事長の違法な定年延長、その目的である検事総長就任の動きに抗議を表明したものだと思われます。
検察庁法は国家公務員法の特別法であり、検事総長を除く検察官の定年を63歳と定めています。特別法ということは一般法である国家公務員法に優先して適用されるということであり、検察庁法が改正されない限り検察官の定年は現在でも63歳となります。これに従えば黒川検事長は今年の2月7日で63歳を迎え、定年退職となるはずでした。これを1月末になって安倍政権は突然検察庁法の解釈を変更して、国家公務員法の勤務期間の延長規定を適用して黒川検事長の定年を6カ月延長したのです。これは解釈の変更でできることではなく、検察庁法の改正が必要でした。従って黒川検事長の定年延長、その結果として東京高検検事長の地位およびそれに基づく報酬は現在違法な状態にあります。違法行為の確認と職務停止、違法報酬の返還などの裁判を起こせば、政府は敗訴する可能性があるのです。しかし法務省管轄下の裁判所が政府敗訴の判決など出すはずがないし、そもそも訴訟を受理しない可能性があるためか、訴訟は提起されていません。しかし、違法状態であることは間違いなく、政府としては早く検察庁法を改正してこの違法状態を解消したいのです。
安倍政権は、これまで政権周辺で起きた刑事事件容疑を悉く不起訴に持ち込んできました。甘利元大臣の斡旋利得罪や森友事件の公文書偽造事件は普通なら起訴間違いなしの事件でした。黒川検事長はその際法務省官房長、事務次官として検察幹部に働きかけ、不起訴に持ち込んだと言われています。従って、安倍政権にとっては貢献大であり、なんとか検事総長にしてその貢献に報いようとしているのは明白です。
しかし、このために法律を破って1個人の定年を延長することは決して許されません。このことは親が会社や役所の規定通り定年退職しているのを目にしている一般の生活者なら身に染みて分かっています。これを日本の首相がやすやすと破ろうとしているのです。その先には、黒川検事長を検事総長にして自らの首相退任後刑事訴追されない状態にしようという意図も見えているのです。
今回の多くのツイートはこれに対する抗議であり、その意図は「安倍さん、ズルしないで!」ということです。これを対して、「公務員と定年を合わせてどこが悪い」「法案読んだのか」とか「問題はそこじゃないでしょう。検察の取り調べ方法や制度でしょ」と非難する人がいますが、ズルしていることは間違ないなく、「ズルするな」という普通の市民の意見表明のどこがいけないのでしょうか?この表明はもっともっと増えていいし、これが日本を変えるきっかけになって欲しいと思います。