財界からも医師会からも見放されている安倍首相

コロナ感染拡大に安倍政権が全く対処できない事実から、安倍首相の岩盤支持者の中からも離反者が出てきているように感じます。新聞などの最近の調査では安倍政権の不支持率が支持率を上回って来ていることからも伺えます。それでも支持率は40%前後あるのですから、不思議です。知識人層からは呆れられサル呼ばわりされており、安倍首相の支持を巡り、国民が2つに分断していることが伺われます。

実は安倍首相の支持層は従来の保守系支配層ではありません。むしろ従来の民主党支持層です。それは民主党系政党が支持率を減らしていることからも分かります。安倍首相がこれまでに行った政策を考えて見て下さい。金融緩和で最もメリットを受けた人たちは借入が多い低所得者層です。自宅の購入も低金利のおかげで出来た人が多いと思われます。また同一労働同一賃金法案も財界を考えたら推進できない政策です。財界を考えたら、小泉政権で竹中元慶大教授の下に進められた非正規社員推進策となります。更に安倍首相は70歳雇用化政策を進めています。これは日本の大企業の国際的競争力を低下させる政策であり、財界としては受け入れられません。私はこれは実現しないと思います。このように安倍首相の政策は財界加盟企業にとって困るものが多く、財界を重視すれば金融緩和以外採れる政策ではありません。

しかし、これらに対して財界の表立った反対はなかったと思います。以前なら経団連の会長が安倍首相と会談し、反対を申し入れていたと思います。しかし、安倍首相になってから経団連会長と安倍首相の会談は驚くほど少ないと思います。特に現在の中西会長になってからは顕著です(中西会長が一時入院していたこともあると思いますが)。

では何故こうも安倍首相は財界に不利な政策を推進したのでしょうか?それはこの方が選挙で票が獲得できるからです。安倍首相は第1次安倍政権のとき、参議院選挙で敗北して首相辞任に追い込まれました。その後首相に返り咲いたあとは選挙に圧勝することで安倍1強の状態を作り出しました。そしてこの選挙に圧勝した原因が従来の民主党支持者の取り込みだったのです。財界はお金は持っていますが、票は余り持っていないのです。選挙で票を得るのなら、非正規や長く働く必要があるサラリーマンを取り込む政策が利巧なのです。だからこれらの人に支持される同一労働同一賃金政策や70歳雇用制などの政策を推進するのです(70歳雇用制は年金制度維持のためでもあります)。

これらに対して財界が正面切って反対できなくなった出来事がありました。それは2018年11月の日産会長(当時)ゴーンの逮捕です。これは未だ受領しておらず、かつ支払いも確定していない報酬を有価証券報告書に記載しなかったという常識的にはあり得ない容疑での逮捕であり、さらにCEOリザーブの使途が特別背任に当たるとの容疑を追加しました。このようなことは財界加盟の大企業であれば多かれ少なかれどこでもあることで、社内または株主で解決すべきことでした。検察がこれで企業のトップを逮捕したことで大企業の社長たちは「明日は我が身」かと恐れおののいたと思われます。安倍首相が検察を思いのままに動かしていたのは甘利議員の不起訴や森友事件などで知れ渡っていましたから、財界加盟の大企業の社長には、ゴーン逮捕も安倍政権の関与がある(指示した或いは承認した)と思った人が多いと思います。これで安倍首相に歯向う財界人はいなくなったと思われます。これは服従ではなく離反と言ってよいと思います。安倍首相は財界加盟大企業内では課長止まりの人であり、そのような評価がこれを後押ししていると考えらえます。

従来なら財界の次に自民党の岩盤支持基盤が医師会です。これとの関係も今回のコロナ対策を見ると希薄なように感じられます。安倍首相がPCR検査1日2万件の実現を公約しても、その実現主体となるはずの医師会は全く動きませんでした。むしろ安倍首相とは無関係に厚生労働省の医系官僚と相談し、病院に厳しいPCR検査基準(保険所に相談に回す基準)を設定・通知し、運用させています(例えばSOP2>93。ゼーゼーハーハー言っている状態)。これに関して安倍首相が医師会長と会談し、協力を要請することもありませんでしたし、加藤厚生労働大臣さえ会談していません。要するに安倍首相は医師会から信頼されていないのです。これが今回コロナ対策が進まない原因の1つです。

このように以前の自民党にとって双璧の岩盤支持層だった財界と医師会は完全に安倍首相から離反しています。