日本を救うのは輸出倍増政策しかない
中日スポーツに、作家の百田尚樹氏が5月9日自身のツイッターで日本が観光客誘致について優先順位を高く付けていることに疑問を投げかけた、という記事が出ていました。内容は、「炎上覚悟で言う」と前置きした上で「日本を素晴らしいと思い、観光に来てくれる外国人は嬉しいが、国や民間が『観光客誘致』を優先順位の高い目的とするのは、どこか違うんではないかと思う」「ましてそれを頼りに生きていく日本人が増えていくのは何かおかしい気がする。中にはそれなしでは生きられない日本人もいる」「その国が観光に力を入れ出した途端、国力が落ちていくような気がする。イタリアやギリシャがそうであるように。また発展途上国で、観光に力を入れている国は、それ以外の発展を放棄した気がする」と言うものです。
実は私も同様なことを考えていました。そのためこのブログでも「おもてなしはご利益のないお題目」(2018.7.10)、「おもてなしが日本人を疲弊させる」(2020.1.21)を書きました。昨年は来日外国人が3,188万人に達し、京都を中心に外国人観光客公害とも言われる状況が発生していました。しかし彼らが、ホテルや旅館、土産物店、鉄道やバス・タクシーなどに沢山のお金を落とし(約4.8兆円)、観光従事者の収入の増加に貢献したのは間違いありません。この面では外国人観光客の誘致は国が豊かになるために有効かつ必要な政策であることは間違いありません。
しかし近年外国観光客の誘致が日本のGDP向上の中心的政策となっており、これは憂慮すべき事態だと思われます。私たちの世代は学校で、日本は資源がない国だから資源を輸入しそれを加工して付加価値を付けて輸出するいわゆる加工貿易に立脚しないとやっていけない、と習いました。当時は教えらたことを鵜呑みするだけでしたが、今考えてその教えは正しいと思われます。1980年代にバブル華やかな日本のピークとも言える時代がありましたが、あれは加工貿易、即ち輸出で稼いだお金が国内に溢れて起きたものと思われます。輸出で外貨を稼いで、それが円に交換され、国内に大量に溢れ出て、不動産に向かったのです。このように実体経済では外貨を稼がない限り口内通貨量は増えず、家計は豊かになりません。もちろん日銀が円紙幣を印刷すればこれと同様の状態を作れます。これを行ったのが安倍政権の金融緩和策です。これは実体経済が活発でお金が溢れるのではなく、お金を溢れさせて実体経済を活発化させようとする政策です。それでも実体経済は活発化しなかったと言うのが今の結果です。当たり前です。実体経済を活発化するためにはイノベーション(技術革新)しかありませんが、安倍政権はこのための政策は何も行っていないからです。力を入れたのは外国人観光客の誘引ですが、これは安倍政権の独自策ではなく、小泉政権の延長上の政策です。
やはり実体経済上お金を溢れさせるには、輸出を増加させるしかありません。
2017年のデータによるとドイツの輸出総額は14,010億ドルでGDPに対する輸出額の割合は46.1%、韓国は5,773憶ドルで42.2%です。これに対して日本は6,883憶ドルで16.0%です。日本の順位は世界118位です。ドイツや韓国の人口は日本の約半分ですから、国民1人当たりにすると日本の輸出額は韓国の約1/2、約ドイツの1/4ということになります。これに対しては米国(20%)を見れば分かるように経済大国は国内経済が大きいから輸出割合は小さくなるとか、日本のメーカーは海外に工場を移転していることが原因だ、とかの反論があるようです。しかし、輸出額が大きくなれば獲得した外貨が円貨に交換され、口内の円貨の流通量が大きくなり、経済が活発化することは間違いありません。その結果、雇用も増え、所得も上がり、税収も増加します。即ち、実体経済が活発化することによって、経済や生活が良くなり、国の財政が良くなるのです。観光も手っ取り早い外貨獲得手段ですが、その効果が観光業界に留まります。輸出はメーカーが中心であり、裾野が広く多くの雇用を生みますから、日本の経済全体への波及効果が大きくなります。やはり長期的な経済強化、財政再建を考えるなら、輸出額の増加を最大の国家目標にして政策を打つ必要があります。日本がこれから目指すべきは輸出倍増です。これなしにコロナで増発された国債残高を減らし、日本の国家財政を健全化する方法はありません。