稲田検事総長は日産を窮地に追い込んだ責任で辞任すべき

5月28日、日産が2020年3月期決算を発表しました。売上高9兆8,789億円、営業損失405億円、当期損失6,712億円でした。前年度比では売上高が1兆6,953億円減少、営業利益が3,587億円減少、当期利益が9,903億円の減少となりました。当期利益では今期廃止予定のスペインやインドネシアの工場の減損など6,030億円を計上したとのことです。販売台数は前年度の551万台から493万台へ58万台減少しています。この結果自動車部門のキャッシュフローは6,410億円のマイナスだったということですから、現金が6,410億円減少したことになります。減損では現金は出て行かないので、営業利益は405億円の赤字となっていますが、実際は6,000億円程度の赤字と見た方がよさそうです。

今期はコロナ感染拡大により世界の販売台数が2割以上落ち込むと予想されており、日産の販売台数は400万台を割り込むことが予想されます。そうなると、スペインやインドネシアの工場を廃止した後の生産能力520万台を維持するコストが収益を圧迫します。その結果悪くすると今期は1兆円近い赤字が出ることが予想されます。今期の赤字は減損など現金が流出しない赤字ではなく、現金流出を伴う赤字です。従って、会社の存続にダイレクトに響きます。未だ2兆円近いキャッシュがあると言っていますが、回復が見えなくなると銀行や取引先が逃げ出すので、予断を許さない状況になってきたと言えます。

これはコロナの影響のように言われていますが、実はゴーンを追放したことによる影響です。この収益悪化の原因をゴーンの拡大路線のせいにする論評が見られますが、そうではありません。ゴーンの手腕では拡大路線の方が利益が出し易かったということです。米国では多額のインセンティブを出して販売しており利益は少なかったと言いますが、それにより日産本体の出荷額が膨らみ、利益が出ていたのですから、これも1つの方法です。経営者には自分の得意な経営スタイルがあります。自動車のような巨大な設備産業では、縮小均衡は難しく、拡大を目指してやっと現状維持です。縮小均衡を目指せば、目標のはるか下まで落ちて行き、底打つ前に倒産します。それが今の日産に心配されることです。

ゴーンがいなくなれば日産がこういう状態になることは、日本の自動車メーカーの経営者なら誰でも分かっていました。それくらい日産はゴーン1人で持っていたのです。

ゴーン逮捕に至った原因は、有価証券報告書に記載されたゴーンの報酬が約20億円から約10億円に減少し、オプションなどの報酬の記載もなかったことから、証券取引等監視委員会が怪しみ、日産の監査役に問い合わせを行ったことが始まりだと思われます。監査役が中心となって調査したところ不当と思われるゴーンの資金使途が現れたため、監査役は疑惑を深めて行ったものと思われます。もしゴーンの不正が明らかになると監査役の責任が問われますから、ある頃から監査役から証券取引等監視委員会に相談するようになったと思われます。証券取引等監視委員会には検察官が出向していますので、これが東京地検特捜部に情報を上げ、特捜部が喰いついたものと思われます。当時特捜部は、大阪地検特捜部の証拠改竄事件により謹慎中で、特捜部改革により証券関係の摘発に力を入れることとなり、新たな捜査班が作られたばかりでした。それに元東京地検検事長の黒川氏の尽力により法制化された司法取引が2018年6月から使えるようになり、ゴーン問題はそれを一番最初に使う絶好の案件でした。そこで特捜部が前のめりになったのです。その結果日産の外国人専務等と司法取引をし、ゴーンは有価証券報告書に記載すべき報酬を過少に記載していたと確信し、逮捕に至ったと思われます。特別背任容疑は後足しです。特捜部が記載すべきだったとした報酬は例え西川社長(当時)とゴーンの間で後日コンサルタント料などの名目で支払う契約があったとしても、支払われたわけではなく、報告書に記載すべき報酬に該当しないのは明確です。これは将来の収入を確定申告の際に申告しなかったとして脱税に問われるようなものです。不当性が分かると思います。

これにより特捜部がゴーンを逮捕したことが今日の日産危機を招きました。これは逮捕すればこういう事態になることは容易に予測できました。従って、ゴーンを逮捕するか否かの判断は、ゴーンの逮捕と日産の倒産のどちらが重要かの判断になります。日産が倒産すれば数十万人の雇用が失われますから、普通に考えれば日産の倒産の方が遥かに重要であり、ゴーンは逮捕しないと言う判断になります。これの最終判断は当時の稲田検事総長がしたことになりますから、今日日産を倒産の危機に陥れた責任は稲田検事総長にあることになります。私は、稲田検事総長は河井案里および克行議員の公職選挙法違反容疑に区切りを付けたら、この責任をとって辞任すべきだと思います。黒川元検事長の賭けマージャン事件については違法な定年延長を行った安倍内閣の責任であり、稲田検事総長に責任はありません。しかし、黒川氏の賭けマージャンは賭博法違反であり、ツイートデモで示された検察に対する信頼に答えるためにも稲田検事総長の責任で起訴して頂きたいと思います。