福祉給付金を申請した時点でNHK受信料の徴収を停止せよ!
NHKの前田会長は6月2日、20年度第1期の受信料の契約総数が8・5万件、衛星契約が2・8万件減少したことを明らかにしたとのことです。20年度第1期は4~6月であり、4~5月の集計と思われます。
リーマン・ショックや、東日本大震災などでも見られなかったほどのかつてない落ち込みだということです。原因は、新型コロナウイルス感染拡大で営業ができなかったことのほか、ホテルなどの事業者の契約解除などが影響したと言っています。前田会長は「かなり深刻な状況。受信料の徴収がこのまま伸びることはなく、むしろ下がると見ている。」と述べています。
私はよくこんな減少数で済んだなと思います。受信契約数は2019年度末で44,714千件となっていますから、8.5万件と言えばわずか0.2%です。コロナの影響による休業や失業で収入が減った世帯に生活資金を支援する特例貸付けには、開始から2カ月で約38万8,000件(6月13日現在)の申請があっています。ということは38万件の解約があるのが普通なのです。また当初30万円現金給付の対象世帯が全世帯の20%程度と言われていました。この世帯が真っ先に支出の削減に動くのがNHK受信料です。解約しようとしてもNHKは応じませんから、8.5万件という解約数は、ホテルの解約の他は生活保護を申請し、NHKが解約を認めざるを得なかった人ではないでしょうか。解約したい人は全契約者の20%以上に上ると思われます。
それが不払率の大幅な上昇になって表れているはずです。不払率は従来の18%から25~30%程度に上昇していると予想されます。前田会長が危機感を強めている本当の理由は不払い率の急上昇です。これはコロナにより生活が脅かされているのだから当然の事態です。
コロナが阿漕なNHK受信料制度を浮き彫りにしたと言えます。NHK受信料は所得の高低に関係なく一律月2,230円(一例)徴収していますから、高所得者には何でもない負担でも低所得者には大変重い負担となっています。低所得者は食費を削って払いているのが実情です。NHK受信料は住民税非課税世帯からも徴収していますから、税金以上に重要な国民の義務となっています。所得が増えない中で相次ぐ消費税引上げ、年金掛け金や健康保険料の引上げにより、低所得家世帯の遣り繰りは限界に来ています。コロナが無くてもNHK受信料の不払い増加は当然の流れでした。これがコロナ拡大で怒涛の流れてなっていると思われます。前田会長には解約率だけでなく不払率も発表すべきです。
昨年7月の参議院議員選挙でN国党が1議席を獲得し、NHK受信料問題は国政レベルの問題となっています。安倍政権としてもこのことに気付いており、昨年9月の内閣改造で総務大臣に経験者である高市早苗衆議院議員を据えました。その後高市大臣はNHKに受信料引下げを迫っていますが、自民党のNHK親衛隊やNHK経営委員会の抵抗に会い、実現していません。
そこで高市大臣はこの4月、総務省に有識者会議を設け、NHKの制度改革の検討に着手しました。新聞報道によるとドイツ公共放送に倣い収入がある全国民から受信料(負担金?)を国が徴収することを検討すると言うことです。これは昨年12月英国の総選挙で勝利した保守党がNHK受信料の手本となっているBBC受信料を廃止する方向で見直すことを公約に掲げたためと思われます。NHKもN国党がNHKのスクランブル放送化を唱えていることに対し、受信料は受信契約の対価でなく負担金であると言い始めました。またテレビ受信機を持たない若者が増加していることからこれらの人から受信料を徴収するためには負担金とする必要があります。この流れに沿えば、新しいNHK制度では今の受信料を公共放送負担金として収入がある個人全員に負担させるという方向に行くと考えられます。
前田会長のNHK会長就任は、NHKをどのような形に再編したら良いのか銀行家の視点で検討して貰う狙いがあると考えられます。NHKは本体で約4,800億円の現金・有価証券を貯め込み、子会社でも1,100億円(剰余金額)以上貯め込んでいます。受信料で建物・設備などを購入し、多額の原価償却費を計上することで期間利益を低く抑え、社内に現金が貯まる仕組みとなっています。NHKの今期の決算は消費税2%引上げ分をNHKが負担したことなどを口実に200億円程度の赤字としてくると予想されます。しかし減価償却費が800億円程度あり、現金は600億円以上増加していると思われます(ただし土地など購入し減らしてくるかもしれません。)。
こんなNHKがコロナで国民が苦しむ中でNHK受信料を徴収し続けることが異常なのです。NHKは1年間受信料の徴収を停止するか、少なくとも特例貸付けや福祉給付金を申請した人にはその時点で受信料の徴収を停止すべきです。