電通、元事務次官を副社長にした効果絶大?
経済産業省(以下経産省)がコロナウイルスの影響で売り上げが減少した中小企業に支給する政府の「持続化給付金事業」を、769億円で「一般社団法人サービスデザイン推進協議会(以下、サービス協議会)」に委託し、サービス協議会は749億円で電通に再委託した仕組みが問題になっています。この取引でサービス協議会は20億円も中抜きしているのですから、当然です。それにこのサービス協議会は実体がないトンネル組織のようなのです。実際に野党議員が東京・築地のビルの2回にあるサービス協議会の事務所に足を運ぶと、インターホンへの応答もないもぬけの殻の状況で、活動している様子はなかったということです。
しかしその翌日にはサービス協議会の幹部が記者会見を開き、組織は実在すると力説し、数名の社員が勤務する事務所内も公開しました。私もテレビで見ましたが、殺風景であり、急ごしらえ感がありました。その数日後にマスコミが事務所を訪問したら、また誰もいなかったとの報道もあります。このようにどうもこのサービス協議会は、幹部を出している経済産業省、電通およびパソナなどが受注調整窓口として作った組織であることが濃厚です。経産省のある幹部は新聞の取材に対して、持続化給付金のようなお金を配れと言われても経産省は配る組織を持っていないのだから、どこかに委託せざるを得ず、その調整役としてサービス協議会が必要だったと言っているようです。それなら電通に再委託するのではなく、電通から再委託されている5社にサービス協議会から再委託すればよかったのです。これを電通に再委託し、更に電通から5社に再委託したのは、明らかに中抜きの意図が見えます。
特にサービス協議会が20億円も中抜きしたのは大問題です。ここの組織(実態不明)だと人件費と諸経費でせいぜい年間1億円もあれば十分です。たぶん10年分の活動費、裏金をプールすることを考えたものと思われます。
この持続化給付金という補助金の中抜きは、1980年代のバブル期に盛んに行われた不動産転がしに似ています。当時私は東京の赤坂に事務所がある会社にいましたが、赤坂周辺のビルを100億円で買っては次に110億円で売却し、更に120億円で売却するという取引が数回行われるという話を聞いたことがあります。しかも事前に数回先まで売買価格、売買当事者まで決まっているということでした。目的は単に売買の当事者に10億円のお金を落とすことだと言っていました。当時は不動産を転がせば10億円くらいのお金を作るのは簡単でした。サービス協議会を使った今回の中抜き劇は不動産が補助金に変わっただけのように思われます。
ここでフィクサーとして登場するのが電通です。電通は放送、広告やイベント界ではなくてはならない存在だと知っていましたが、補助金の支給も牛耳っていたとは驚きです。やはり昨年12月、元総務事務次官の桜井 峻氏を電通グループ副社長にした効果は絶大のようです。何故かこの事実についてはマスコミは全く触れません。
このブログを書いた後6月15日には、総務省も同じような仕組みでマイナンバーカードを使ったポイント還元事業の事務を一旦「一般社団法人環境共創イニシアチブ」に委託し、その後多くを電通に再委託していたことが報道されました。こちらの方は元総務事務次官である桜井氏の電通副社長就任お祝いでしょう。本来こんな天下りがいけないことは自明なことなのに、これを行った桜井元事務次官のモラルが疑われます。
尚、通常なら躊躇するような今回の取引に電通が積極的に取り組む背景は、電通のカルチャーを作っていると言われる「電通鬼十則」を読めば理解できます。
電通鬼十則
1.仕事は自ら創るべきで、与えられるべきではない。
2.仕事とは先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3.大きな仕事と取組め! 小さな仕事は己を小さくする。
4.難しい仕事を狙え! そして成し遂げるところに進歩がある。
5.取組んだら放すな! 殺されても放すな! 目的を完遂するまでは...
6.周囲を引きずり回せ! 引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地の開きができる。
7.計画を持て! 長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8.自信を持て! 自信が無いから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚みすらがない。
9.頭は常に全回転、八方に気を配って、一部の隙もあってはならぬ!! サービスとはそのようなものだ。
10.摩擦を怖れるな! 摩擦は進歩の母、積極の肥料だ。でないと君は卑屈未練になる。
以上