日本と中国の関係は鎌倉幕府と元の時代へ。もう神風は吹かない

日本と中国の関係が怪しくなってきました。中国は7月1日、香港国家安全維持法を施行しましたが、米国や欧州の国々はこの動きを早くから激しく非難してきましました。一方日本はこれまで批判を控えてきたように思えました。しかし7月1日には菅官房長官が記者会見で批判のコメントを出しました。これに対して中国は反発しています。

この法律に対する日本の動きを牽制するように中国は尖閣諸島で領海侵入を繰り返しているようです。中国は尖閣は自国領土と主張していましたし、また他国領としても無害航行であり問題ないという主張のようですが、これは香港国家安全維持法で日本が米国らと同調したら尖閣諸島の問題がこじれるよ、という警告のようにも思えます。さらに宮古市が尖閣諸島の住所を「登野城」から「登野城尖閣」に変更することを決めたことも中国を刺激していると思われます。

今年4月に予定していた習近平国家中国主席の来日が中止になってから、コロナの問題もあって政府関係者の往来も途絶え、何だか日中関係がとげとげしくなってきたように感じられます。中国は米国と貿易で激しく対立し、インドとは国境問題で衝突を引き起こしていますし、オーストラリアとも安全保障上の摩擦が生じています。それに香港問題では欧州諸国から批判され、所謂民主主義国家と対立する構図です。この中で民主主義国家の範疇に入る日本は、いつも曖昧な態度を取り続けています。例えばロシアに対する態度がそうです。2014年ロシアによるウクライナ介入やクリミア併合に対し欧州諸国や米国がロシアに制裁を科したのに対し、日本は同調しませんでした。北方領土交渉があったからだと思われますが、北方領土についてはロシアは返還するメリットが全くなく、北方領土返還の期待は安倍首相の夢想とも言えるものでした。こんなことをしていたら、日本が中国やロシアと対立したとき、欧州はこれまでの日本の態度に対する仕返しとばかりに、傍観を決め込むものと思われます。残るはいつもの米国頼みとなります。

東アジアの現在を見ると、1271~1368年の元の時代や次の明の時代(1368~1644年)に似てきたと思われます。中国が圧倒的な力を有し、日本と韓国、北朝鮮を圧迫しています。元の時代の日本は鎌倉政府ですが、1274年(文永の役)と1281年(弘安の役)の2回に渡り、元は日本侵略を企てています。文永の役では不慣れな異国での戦いと日本軍の善戦より撤退を余儀なくさせられます。満を持して当時世界最大規模の艦船で押しかけた弘安の役では、有名な神風(台風、暴風雨)によりその艦船の多くが被害を受け、撤収します。もし神風が吹かなかったら、先ず九州が占領され、その後日本は降伏し、元の属国になっていた可能性が大きいと考えられます。当時朝鮮半島は高麗が支配していましたが、高麗は元の属国であり、元と同盟軍を結成し日本に押しかけています。現在韓国政権は親北朝鮮、親中国であり、米国との関係はギクシャクしています。そのため米軍の駐留費の負担増額などで対立が深まれば、韓国は米韓同盟を破棄し(或いは米国に破棄させて)、中国と同盟を結ぶ方向になると思われます。韓国の貿易相手国は中国が第1位であり、経済的にも米国より中国が重要です。それに中国と同盟を結べば、中国の下に北朝鮮と韓国が入ることになり、韓国と北朝鮮の関係も安定します。これはかって中国と朝鮮半島に存在した国家との関係と同じです。そして日本の状況も元・鎌倉時代と同じです。

中国の2018年度のGDPは約1,500兆円であり、日本の約550兆円と3倍近い開きがあります。またGDPの伸び率は中国が6%台に対し、日本は0%台ですから、今後GDPの差は益々拡大します。軍事費も中国約28兆円、日本約5兆円であり、中国が5倍以上の額になっています。その結果、装備の一部は日本の方が近代的と言ってもトータルな戦力では太刀打ちできないレベルと言えます。今後中国は、この巨大な軍事力を用いて尖閣諸島を圧迫してくると思われます。中国としては自国領土と主張しているわけだから、侵略という意識はないはずです。民間漁船の保護を巡り、海上保安庁と中国海警の巡視船の間で発砲事件が生じ、これにより双方の軍艦が出撃し、砲撃戦になるという展開が予想されます。その際中国は数百隻の軍艦を出撃させ、海軍力で制圧を図ってきます。残念ながら勝ち目はないと思います。

そして次に危惧されるのが、沖縄の独立です。そもそも今の沖縄は琉球王国という中国の明・清の影響下にある独立国家であったのを、1609年薩摩藩が侵攻し、徳川幕府の影響下にも置いたものです(両方の元号を施行していた)。そして1871年に琉球王国を鹿児島県の管轄下におき、1877年に琉球王国を廃止し琉球藩とし、1879年には清との関係を絶たせ、沖縄県としています。琉球王国は、1854年には米国と、1855年にはフランスと修好通商条約を結んでいますから、それまで独立国家だったことは明確です。ということは、日本に併合されてからまだ約150年にしか経っていない訳ですから、またかっての琉球王国のような独立国家となるという動きが出て来てもおかしくありません。中国が尖閣諸島を自国領に組み入れたら必ず沖縄に働きかけて来ます。沖縄諸島は、中国海軍の太平洋に進出を阻むような位置にあり、中国としては領土か同盟国にしたいところです。

このシナリオを防げるかどうかは、今後日本がGDPを現在の約2倍の1,000兆円に増やせるかどうかにかかっています。そのためには輸出倍増、生産性倍増の実現が欠かせません。