薬の怖い副作用のお話
2年くらい前から血圧が高くなり、降圧剤を服用するようになりました。当時は最高血圧が130(mmHg)、最低血圧が80(mmHg)以内が正常値とされていましたが、私は朝起床時145、90くらいありました。この2、3年前までは139、89までが正常値とされ、それが急に130、80に引き下げられたのは、降圧剤の処方増加を狙った医師会と製薬業界の陰謀ではないかという言う人いましたから、それ程問題にするレベルではありませんでした。しかし、夕方の5時、6時ころになると、155、95くらいに上昇することが多くなり、肺が圧迫され、頭が重くなる状態になったため、降圧剤を服用することにしました。
私のような降圧剤初心者の場合、医師はカルシウム拮抗剤を処方します。これは血管にあるカルシウムイオンの通り道(チャネル)の入り口(レセプター)に、カルシムイオンに似せた合成物(薬)を結合させ、カルシムイオンが通過できなくするものです。カルシウムイオンがこのチャネルを通過するためにレセプターに結合すると血管が収縮し血圧が上昇するため、これを薬が先回りし塞ぎ、カルシウムイオンが結合できなくするものです。この薬が降圧剤初心者の第一選択薬となっており、殆どの医師が先ずこれを処方するようです。
私の場合この薬(アムロジピン)を飲んで、朝の起床時の血圧が130~135、80~85まで下がりました。また問題だった夕方の血圧も135~140、85~90に下がりました。昼間の時間帯は正常値です。
半年経って医師は朝の起床時の血圧をもっと下げた方が良いと言い、もう1剤追加して服用するよう勧めました。それはARB拮抗剤と言われるもので、第二選択剤となっているものです。これはアンジオテンシンⅡ(A)という血圧を上げる体内物質が、そのレセプター(R)に結合するのを邪魔(Block)して、血圧の上昇を防ごうとする薬です。私はARB拮抗剤(テルミサタン)単独でも正常値に下がるのではないかと考え、先ずはテルミサタンを単独で服用してみました。その結果、朝の起床時や昼間の時間帯はカルシム拮抗剤より少し下がりました。しかし、夕方になると効果がなくなり、服用していないときと同じレベルに上昇しました。アムロジピンの有効時間は1日以上あるのですが、テルミサタンの有効時間は15~16時間と短い感じでした(個人差があるようです)。それにアムロジピンを服用すると体が軽く感じる(全身の血管が拡張するせい?)のですが、テルミサタンは重く感じました。そこでテルミサタンは合わないと思い、服用しないこととしました。
その1年後少し規模が大きい循環器内科の病院で見てもらったところ、そこの医師は心電図の波形を見て、「不整脈がありますね」と言います。これまで心電図の波形で異常は指摘されていましたが、「加齢によるもので心配なし」と言われていました。事実不整脈はあったので、さすが専門病院と感心しました。更にその場で心臓の超音波検査を勧められてやって見ると、心臓の壁が正常だと8,9㎜のところ13,14㎜あり、4,5㎜厚くなっている、このため血圧が上がっていることが分かりました。また、心室から心房へは血液が逆流しないように逆流防止弁が付いていますが、機能が弱まり少し逆流していることも分かりました。これが不整脈の原因になっているようでした。このように今まで高血圧の原因が分からないまま降圧剤を服用していたのに、原因が判明し、さすが専門病院と感心しました。そこで医師は、不整脈があるということは心不全の状態であり、これ以上悪化しないように心臓保護薬を服用した方が良いと言います。服用する薬はβ遮断薬と言われるもので、心臓表面のβレセプターにアドレナリンが結合し、心臓が興奮し負担がかかるのを防止する薬ということでした。高血圧の原因が分かりすっかり医師を信用した私は即座に了承しました。この薬はカルベジロール(アーティスト)と言われる薬で、よく服用されている薬です。これを先ずは単独で最小単位(2.5mmg)服用して見たところ、朝の起床時の血圧は少し上昇し、血圧低下効果はないことが分かりました。従ってカルシム拮抗剤との併用は必須でした。またアドレナリンと言えば有名な興奮物質なので、これが結合する穴を塞ぐと、アドレナリンが他に行くわけだから、副作用が懸念されます。副作用の説明書にも少し書いてありましたが、夜中に夢(ショートストリー)を見る機会が増えたように感じました。アドレナリンか薬が脳に影響を与えているようでした。本来の効果である心臓保護作用は実感することはありませんでした。そんな状態で心臓保護作用を信じて服用を続け8カ月が過ぎた頃、血液検査をしたところ、全て正常値で副作用は出ていないことが分かりました。しかしこの頃、深呼吸をすると咳が出る現象が出ていました。コロナ流行の時期であり、そちらも疑われましたが、なんとなくカルベジロールの副作用が気になりました。そこで医師にその現象を言うと、胸に聴診器を当て、「心臓の鼓動も肺の呼吸音も正常であり、問題ありません」と言います。それで暫くしたら治るだろうと思ったのですが、1週間経っても治らないし、胸の真ん中付近が狭くなっている感じがします。そこでカルベジロールの副作用を疑い、「カルベジロール 咳」でネット検索してみました。そしたら、カルベジロールのようなβ遮断薬には気管支を収縮させる効果があると書いた記事が見つかりました。そのため喘息やCOPDと言われる慢性肺疾患には禁忌となっているとのことです。メカニズムとしてカルベジロールは心臓にあるβ1レセプターと気管支にあるβ2レセプターに結合し、心臓保護作用と気管支収縮作用を同時に発揮するとなっています(あと量が多ければ血管のαレセプターに結合して血管を広げる)。その効果の割合は7:1となっています。これから循環器内科の医師は心臓保護作用を重視し、よく処方するけれど、呼吸器内科の医師は気管支収縮という副作用を重視し、あまり処方しないようです。私の場合、8カ月の服用の結果、β2レセプターに結合するものが増加し、気管支収縮の副作用が出てきたようでした。これが分かり、私は自分の判断でカルベジロールの服用を中止しました。その結果、翌日から咳は収まって行き、胸の気道が狭くなっているような感じも1週間程度で解消しました。病院には3カ月に1度行っているため、未だ担当医師には会っていませんが、このような副作用についてその医師からこれまで何の話もなかったことから、その医師は知らなったものと思われます(30代の若い医師です)。このときつくづくと薬の副作用の怖さを感じました。医師から薬を処方されたら、先ず副作用についてネットで調べて、異常を感じたら服用を中止することが必要だと思います。医師は製薬会社のMRから薬の説明を受けているだけで、副作用については詳しくありません(自分で試しているわけではなく、実際に担当患者に副作用が生じて初めて実感する)。薬剤師も教科書レベルの知識しかありません。薬の副作用から身を守れるのは自分だけだと思います。