黒川元検事長は検察審査会で強制起訴される
賭博罪、常習賭博罪の疑いで告発されていた黒川元東京高検検事長(以下黒川元検事長)について7月10日、東京地検は不起訴(起訴猶予)処分としました。本人が賭けマージャンを認めており、賭博罪は成立しうると判断した上で、前検事長が辞職したことを考慮し不起訴処分としたということです。
マージャンなどの勝ち負けに現金を賭ける行為は刑法の賭博罪で禁じられ、法定刑は50万円以下の罰金または科料と定められています。日常的に繰り返すなどの常習性がある場合はより刑が重い常習賭博罪となり、3年以下の懲役となります。
黒川元検事長は、仲間の新聞記者と約3年前から月1~2回、1千点を100円に換算する「点ピン」と呼ばれるレートで賭けマージャンを行っていましたが、これは特別高いレートとはいえず、射幸性をあおるような特殊なルールもなかったとして、不起訴(起訴猶予)処分にしたということです。
たぶん賭けマージャンで検察が起訴・不起訴の基準をこれだけ明確にしたのは初めてのケースと考えられます。これは法律の条文を書き換えたに等しい一種の立法行為とも言えます。それだけ検察としては不起訴処分にするのに苦労したということだと思います。
今回の黒川元検事長の賭けマージャンについては、告発された段階で検察は不起訴処分という結論は決めて、あとは理由作りに腐心したと思われます。元検察NO.2の東京高検検事長まで務めた人をその部下の検察官が起訴できるはずがありません。
ここで不起訴処分が起訴猶予となっていることに注意する必要があります。不起訴になる理由としては、
(1)「嫌疑なし」(2)「嫌疑不十分」(3)「起訴猶予」、の3つがあります。
(1)「嫌疑なし」とは、犯罪の嫌疑がかかったので捜査したがそのような嫌疑はなかったということです。
(3)「嫌疑不十分」とは、罪を犯したという疑いは残っているが、これを証明するための証拠が十分ではないので、起訴しないということです。
(3)「起訴猶予」とは、罪を犯しており証明もできるが、軽い犯罪であるとか、被害者と示談ができて被害者も許してくれた、社会的制裁を既に受けている、深く反省しているなどの理由で、今回は、起訴しないであげますということです。
今回はこのうち(3)に当たると言う訳です。多くの国民は、取り締まる方である検察の、しかもNO.2が犯罪行為であることを知りながら繰り返し行っていたのだから、処罰すべきと思っていると考えられます。これに対して東京地検の次席検事は10日、黒川元検事長が検察幹部という身分だったことに触れ「一般人よりも処罰を重くすべきではないかとの国民感情は理解でき、重く受け止めている。ただ(処分は)法と証拠に基づき判断した」と述べたということです。全く理由になっていません。国民感情を重く受け止めているなら起訴しかありえません。黒川元検事長に対する不起訴処分を認めたら、賭けマージャンは取り締まれなくなりますし、賭博罪の条文変更が必要となります。検察は身内の犯罪を庇うために、法律の条文まで修正を加えようとしています。
これでわかることは、検察官の処分を検察官が決めるのは無理だということです。今回の不起訴処分を受け7月13日に検察審査会に審査申立が行われましたが、検察官が被疑者の場合、最初から検察審議会で審査すればよいと思います。今後の検察審査会では起訴相当の議決がなされると思われますが、その後検察は再検討しまた不起訴処分とします。その結果、再度検察審査会で審査し再度起訴相当の議決がなされ、黒川元検事長は強制起訴されると予想されます。
尚、検察にとって検察審査会への審査申立は想定内であり、不起訴不当の議決を予想していると考えられます。何故なら、不起訴不当なら検察で再度検討して再度不起訴処分にすればこの件はこれで終結するからです。従って、不起訴不当の議決なら検察の思う壺ということになります。検察審査会は起訴相当の議決をしないと検察の不起訴処分を妥当と認めたことになるということです。検察の検察審審査会で不起訴不当の議決がなされることを狙った(起訴相当の議決はできないだろうと見越した)不起訴処分は、森友学園事件でも使われています。検察社会の構図も一般社会と変わらず、信頼し過ぎはいけません。