韓国への対抗措置は日本の輸出倍増政策が効果的
韓国では8月4日から徴用工判決に基づき賠償金(約3,700万円)の代わりに差し押えた新日鉄が保有する株式(ポスコ株)を現金化できるようになるという報道です。この件に関してはこれまで日韓両国とも1965年の日韓請求権協定で「解決済み」としてきましたが、韓国大法院が2018年、協定で消滅したのは国家間の請求権であり個人の請求権は消滅していないという判決を出したため、徴用工側は新日鉄が保有する株式を差し押さえていました。徴用工側は、これにより新日鉄側から賠償金の支払を得ようとしましたが、日本政府の立場もあって新日鉄側は応じませんでした。
8月4日になり徴用工側が差し押さえた株式を現金化すれば、日本側は対抗措置を取ると言われています。既に2019年7月から安全保障を理由として韓国への半導体素材などの輸出を規制していますが、これは実質的には株式差し押えに対する対抗措置と言われています。この際輸出規制されたのは、半導体の製造プロセスで必要となり、韓国企業が日本から輸入する割合が高いレジスト、高純度フッ化水素、フッ化ポリイミドという3つの素材でした。しかし規制が弱くこれにより韓国半導体メーカーが生産に支障をきたすことはありませんでした。一方では韓国の企業が国産化を進める契機となりました。半導体で世界的地位を占める韓国企業が本気で取り組めば早々国産化されることは自明のことでした。日本の輸出規制は韓国の競争力を強めただけと言えます。
8月4日以降株式の現金化が実施された場合、日本政府が対抗措置を取るのは確実ですが、どれも韓国を本当に困らせるものにはならないと思われます。
本当に韓国に効く対抗措置は、日本の輸出倍増政策です。この日本の輸出倍増政策は、本来日本の財政改善の観点から考えられたものです。これを唱えるデービット・アトキンソン氏の著書によると2015年の日本の輸出総額は6,240憶ドルと世界3位ですが、GDP比で見ると16%であり、世界でも低い順位となります。一方ドイツは1兆2,920億ドルでGDP比46%、お隣韓国は5,350憶ドルでGDP42%となっています。これらの国の人口を見ると、日本1億2,700万人、ドイツ8,180万人、韓国5,160万人ですから、国民1人当たりで見るとドイツ15,800ドル、韓国10,371ドル、日本4,914ドルとなります。これから日本の輸出額が少なく、大きく伸ばす余地があることが分かります。韓国との比較で言えば、韓国がここまで輸出大国になったのは、日本から技術を導入し、日本の輸出品の地位を奪って行ったからです。造船、鉄鋼、家電、液晶、半導体などかっては日本が世界最大の輸出国でしたが、あっという間に韓国に奪われ、今では日本の存在は小さくなっています。その原因はバルブ時代に遡ります。1980年日本はバブル時代となり、それまでのモノ造りと輸出中心の経済から、不動産や金融、サービスなどの経済にシフトしました。不動産や株式の売買では労せずして大金を稼げるのですから、キツイ・汚いというモノ造り企業に優秀な若者が行かなくなってしまいました。また日本政府もこの状態を内需主導型経済への移行として奨励しました。その結果1990年頃には日本のメーカーの開発力や製造力は弱体化したと思われます。それが1990年以降バブル崩壊で露呈し、輸出が減少したことが失われた20年とも30年も言われる時代を生み出しました。
コロナ禍により国債発行残高は1,000兆円を突破し、年間国家予算の歳入に占める国債の割合が50%を超える事態が予想されます。今のような所得が増えない状況では税率を上げ税収の増加を図ることは無理であり、このままでは基礎年金半減、健康保険料・負担割合倍増などが必要となります。これらを防ぐ唯一の解決策がGDP1,000兆円の達成です。もしGDPが1,000兆円となれば、GDPに占める国債残高の割合は約100%となり、国際的にも問題の無いレベルとなります。また税収は大幅にアップし、年間予算は税収で賄えるようになると考えられます。そして1人当たりGDPも現在の約41,000ドルから約80,000ドルにアップします。このGDP倍増政策は輸出が主導する必要がります。(その他に国内全分野の生産性倍増が必要)。
実は、これが韓国に対する最高の対抗措置なのです。これを日本がやれば、韓国の有力輸出分野がターゲットとなります。その結果世界各地で韓国の輸出を奪い、韓国の輸出は減少して行きます。GDPに対する輸出割合の高い韓国にとっては大打撃です。これは日本にとっても必要な政策であり、かつ韓国に対する最高の対抗策です。