ローンで家を買う時代は終わり

コロナ感染拡大の影響で失業者が増大しそうです。これまでの失業者は、飲食、宿泊、観光業などの自営業や中小企業が中心でしたが、これからは大企業に広がってくると思われます。7月に発表された上場企業の今期決算見通しでは大幅な赤字を予想する企業が多くなっています。例えば、2021年3月期の決算予想として、日産が6,700億円、三菱自動車が3,600億円、伊勢丹が600億円の赤字となっています。また第一四半期としては、ANAが約1,600億円、JALが約1,200億円、JR東日本が約1,550億円の赤字となっています。いずれも普通なら倒産が危惧されるレベルの赤字です。これらの企業は、比較的財務基盤が強く、コロナが収束すればまた利益を出せる見込みが高いため、それ程心配されていません。しかし、財務基盤が弱く、これまでの金融緩和による低金利のおかげで生き延びてきた企業は、今後存続の危機に直面します。おそらくたくさんの企業が倒産すると思われます。それを防ぐため、この秋口からは大量の解雇が行われると予想されます。先ずは契約社員が契約満了で解雇され、次には正社員も所属部署の廃止などの理由で解雇されると思われます。これらの取引先はその前に仕事がなくなり、閉鎖に追い込まれる所が多数出ます。こう考えると失業率は来年中に10%を超えるかも知れません。

これを契機として企業は、いわゆるジョブ型雇用にシフトすると考えられます。ジョブ型雇用と言うのは、部署ごとに専門技能を持った人を雇用する形態ですから、スペシャリストでないと職にありつけないことになります。それは過剰になったら辞めてもらい、必要とされる企業に移って貰うことを可能とするものでもあります。これにより、大学新卒を一括採用し、社内でジョブローテンションを行いジェネラリストに育て、一生会社で雇用する終身雇用制は減少して行くと思われます。これは先進国の中で低いオフィスワークの生産性向上の観点からも必要な取り組みであり、必然の方向性です。

こうなると一生1つの会社に勤めることを前提に考えられているローンで家を買うというサラリーマンの行動も変革が迫られます。安倍首相の金融緩和、低金利政策により住宅ローンのバーが下がり、これまでローンが組めなかった人までローンが組め、住宅を購入して来ました。その人たちの中に今回のコロナで職を失い、または収入が激減し、ローンの返済が出来なくなった人が多数出ていると考えられます。コロナ禍を考え年内は金融機関も返済の猶予に応じると思いますが、来年以降は家の処分による返済要請や差押えに動くと考えられます。今のような状況で買い手が現れるとは思われず、多くは差し押さえられることとなります。これは若い世代ばかりでなく、40代でも多発すると考えられます。というのは、40代はこれから幹部になる人材ともう成長が止まり、会社としては期待できない人材が明らかになる世代であり、リストラの最大のターゲットとなるからです。この世代でもリストラされ、住宅ローンを払えない人が多数でます。

このように今後のサラリーマンの人生では、定年まで同じ会社で勤め上げる人は少数派になると考えらえます。と言うことは、多くのサラリーマンは、20年、30年のローンを組んで家を買うという行動は採れなくなるということです。

それに家を買うことは、人生において必ずしも賢明な判断とは言えなくなっています。それは人生の各段階において家族の数が変化し、必要な住宅も変化するからです。例えば夫婦2人世帯から始まり、子供が2人できて4人家族となり、120㎡の家が必要だったとしても、子供が独立し夫婦2人の生活になれば、この家は広過ぎます。この半分の広さの家で十分です。これが年をとって1人での生活になればこれでも広過ぎます。さらに施設に入る年齢になると、自宅の管理や処分の問題で頭を悩ませることになります。こう考えると、わざわざリスクを負って家を買うことはないのです。賃貸住宅で十分だと思います。定年退職後に必要なのは自宅ではなく、十分な資金です。自宅よりその分の資金が手元にある方がずっと心強いです。もし貸してくれる家が無ければ、地方に行けば安い物件が沢山あります。もう家をローンで買う時代ではないと思います。