総務省の「緊急浚渫推進事業費」予算は称賛に値する
今年も記録的な大雨で河川が氾濫し、各地で大きな被害が生じました。中でも7月4日の大雨で球磨川が氾濫し、多数の死者や被害が出たことは痛ましい限りです。その際、球磨川流域の中心都市であるに人吉市も広い範囲に渡って水没し、水位は深い所で約5mに達したようです。これは家の2階部分を越え屋根まで達する水位であり、屋根に上って助かった人も多いようです。この際も気象庁の発表では50年に1度の大雨と言っていますが、最近はこの表現を年間何回も聞くようになっており、特別な大雨の表現としては不適切になって来ています。今後はこれくらいの雨が普通になると言う考えの元に治水対策をする必要があります。
今回の球磨川氾濫については、2008年に計画が廃止された川辺川ダムを建設していれば防げたとの声も出ています。群馬県の八ッ場ダムが民主党政権で一度廃止になり、自民党政権で復活・建設されたため、2019年10月の大雨による利根川流域の洪水を防げたとの声があるからです。川辺川ダムがあったら、被害を少なくしていた可能性はあると思いますが、被害を全面的に防ぐことはできなかったと思われます。それは川辺川ダムも今回のような未曾有の大雨による洪水を防ぐことを目的に計画されたわけではないからです。それでも今後ダムによる治水計画は見直されてくると考えられます。
もう一つ考えなければないことは、球磨川のような国が管理する河川に流れ込む地方が管理する河川が氾濫して大きな被害をもたらすケースが増えていることです。今回の球磨川の洪水でも、球磨川に流れ込む支流が氾濫し、球磨村の特別養護老人ホーム「千寿園」が水没し、14名の入所者が亡くなりました。これは支流に増水した球磨川の水が流れ込み、支流の低くなっていた堤防を越水したことが原因と言われています。2018年7月の高梁川氾濫でも支流の小田川に高梁川の増水した水が流れ込み、脆弱だった小田川の堤防を破壊して洪水が発生しました。このように国が管理する河川と県などが管理する河川の管理レベルの差により洪水が発生するケースが増えています。
これらの問題について菅官房長官は、日経ビジネス誌上で、今後治水ダムの増設や本流・支流の管理分担の見直しを検討すると述べています。これは見識だと思われます。
それと同時に、もっと確実にできる対策として、支流の河床浚渫の促進があります。これは割と軽視されていますが、洪水に対して即効性がある対策です。私が住んでいる福岡市早良区には室見川という背振山系から流れ出る2級河川があります。普段は水量が少なく、水深20~30㎝の部分が多い穏やかな川です。しかし上流域に花崗岩でできた山があるため、大雨の際に花崗岩が風化した真砂土を中心とした土砂が流れ込み、河床に堆積します。その結果、1回の大雨で河床に30㎝くらい土砂が堆積することもあります。最近ではこれが年間数回あり、2018年頃には1m~1.5mも堆積していました。この為2018年7月の大雨の際にはあと1m程度で堤防を越水する状態となりました。水かさが5mくらい増えていたと思われます。これがあったことから、2019年および2020年の冬の渇水期に大規模な浚渫が行われました。河床に重機が数台入り、まるでビルの建設現場のような風景でした。これにより河床の土砂が1m~1.5m取り除かれました。この効果は今年7月の大雨の際に発揮されました。これまで毎年この時期の大雨で河川敷の遊歩道が水没していたのに、今年は1度も水没しなかったのです。決して今年の雨量が少なかった訳ではないので、浚渫の効果であることは間違いありません。
ダムの建設には時間が掛かるので、先ずは秋の大雨に備えて支流の土砂の浚渫を進めるべきだと思われます。ここで思い出したのが、今年初めだったか高市総務大臣がBSフジのプライムニュースに出演し、「来年(2020年度)の予算に地方公共団体が管理する河川の浚渫を進めるために、総務省で緊急浚渫推進事業費を創設した。これは私の悲願だった。河川の管理は主に国土交通省の管轄であるが、支流は地方公共団体の管轄となっており、地方公共団体は予算の関係で河川の管理が十分でない。地方公共団体の洪水対策としては河川の浚渫が効果的なので、浚渫費を助成することにし、そのための予算を年間1,000億円、5年間で5,000億円確保した。これで洪水の被害を相当防げるはずだ。」と自慢げに語っていました。これは卓見であり、高市総務大臣の有能さを示すものだと思います。
高市総務大臣は、昨年9月の総務大臣に再就任して以来見識のある判断を繰り出しています。私は、日本初の女性首相には高市総務大臣がふさわしいと思います。