長州の宰相の歴史に終止符を打った安倍首相

現在の山口県は江戸時代には長州と呼ばれましたが、明治以降8人の首相を輩出しています。順に伊藤博文、山形有朋、桂太郎、寺内正毅、田中義一、岸信介、佐藤栄作そして現在の安倍晋三首相です。このうち4人は軍人出身であり、軍部の要職を長州出身者で固めていたことがこの要因と言われています。しかし、私が知っている岸信介氏や佐藤栄作氏は、歴代首相の中でも優秀だったと思います。岸信介氏は、国内の激しい反対に会いながら1960年に日米安保条約を改訂しましたし、その弟の佐藤栄作氏は、1972年沖縄の日本復帰を成し遂げています。共に宰相にふさわしい人物だったと思われます。

これに対して安倍首相はどうでしょうか?やったことと言えば大規模金融緩和くらいしか思い当たりません。たしか首相就任当初はアベノミクスの3本の矢を放つと言っていましたが、金融緩和以外の2つの政策は名前すら浮かびません。アベノミクスというのは言葉だけで実際に行ったのは大規模金融緩和だけでした。大規模金融緩和を行えば、お金が大量に流通し、株や不動産の値上がりにより一時的に好景気になるのは明らかです。しかし、それは一種のバブルであり、これを永続させるためには新産業や新サービスの創造、輸出の増加などが欠かせません。安倍政権はこれらを怠りました。そのため昨年来経済が息切れし、金融緩和バブルの縮小に向かっていました。それが今年コロナ感染拡大に見舞われ、経済活動は瀕死の状態になっています。これは安倍政権がコロナ感染拡大を抑え込む政策を実施しなかったからです。外出抑制や3密防止などでは感染拡大はある程度防げますが、コロナを抑え込むことはできません。コロナを抑え込むとすれば韓国や中国、その他の国々で採られているように、PCR検査を拡大し、コロナ感染者を片っ端から見つけ出し、隔離するしかありません。これで韓国や中国は見事に抑え込んでいます。一方安倍政権はこれを実施しませんから、市中にコロナ感染者が留まり、抑え込むことは不可能です。

なぜこれが出来ないかと言えば、安倍首相が思考力を失くしているからです。安倍首相は考えることは今井補佐官に全面的に依存してきましたから、思考力や判断力が欠落しています。それを今曝け出しています。本人もこれを強く自覚し、これが国民の目に晒されることになる記者会見や国会での答弁から逃げ回っているように見えます。

岸信介氏は、激しい学生デモに会いながら日米安保条約の改定を成し遂げました。佐藤栄作氏は自ら先頭に立って米国と交渉し、沖縄の日本復帰を成し遂げました。安倍首相もロシアが占領する北方領土の返還を実現して佐藤栄作氏と並びたかったのでしょうが、その方法がロシアのプーチン大統領と仲良くなることだけでは実現するはずがありませんでした。安倍首相の思考力ではこれくらいしか浮かばなかったものと思われます。米国のトランプ大統領とは仲良し作戦で上手く行きましたが、これでは大きな取引はできません。

現在コロナ禍でいら立っている国民は、安倍首相の無能さに気付き、安倍首相を冷ややかな目で見つめています。安倍首相もこのことを十分自覚しており、国民の視線が刺さるように痛い状態だと思われます。これ程能力の無さを曝け出して立ち往生した首相をこれまで見たことがありません。

安倍首相は、選挙区は山口県(長州)であり、地元では長州出身の8人目の首相と囃し立てています。しかし安倍首相は東京生まれの東京育ち、それもお坊ちゃま校である成蹊学園出身であり、実質的には長州出身とは言えません。山口は過疎化が進み、今では人材面でもかっての長州の面影はなく、そのため東京出身の安倍首相を長州出身に仕立て上げ、過去の栄光にしがみついているように見えます。そしてこのことを見事に立証した安倍首相が長州の宰相の歴史に終止符を打つことになりそうです。明治維新の中心となった薩長土肥の中で排除の論理で権力の中枢に居続けた長州から今後首相が出ることはないと思われます。