安倍首相の辞任は内外から首相であることを否定されたから

8月28日、安倍首相が辞任しました。同日の午後5時から記者会見すると報道されていましたが、辞任会見になるとの報道は無かったことから、当日安倍首相が1人で決めたものと思われます。

安倍首相は辞任の原因を持病の潰瘍性大腸炎の悪化と言っており、たぶんその通りだと思います。問題は何故これほど悪化したかということです。悪化の兆候は4月頃から見られました。私はそれを発見し、4月21日に「安倍首相の様子が前回の退任時に似てきた」というブログを書いています。この頃と言えばコロナ感染が拡大し始め、安倍首相は打つ手が的外れで、国民を呆れさせることが続いていました。先ずは2月28日に学校の一斉休校を要請したことから始まります。これが金曜日に言い出し、翌月曜日からという急なものであったことから、国民は大混乱に陥ります。これを決めるのに専門家の審議を経ていなかったことも批判を浴びます。またPCR検査を1日2万件にすると発表したにも関わらず一向に増えなかったことも安倍首相の指導力の無さを露呈する結果となりました。そんな中で4月1日全国民に布製マスクを1人2枚配布すると発表しました。これは一国の首相から出て来る発想がこの程度かと多くの国民を唖然とさせました。それに引き続いて4月12日、外出を控えようと言う意図で自宅で寛ぐ安倍首相の様子をユーチューブにアップしたところ、多くの国民の状況と乖離し無神経過ぎると反発を招くこととなりました。

そして安倍首相の迷走の頂点は、4月7日に閣議決定していたコロナで収入が激減した人を対象にした30万円支給を、4月16日突然全国民を対象にした一律10万円支給に変更したことでした。これは4月14日に衆議院静岡補選が告示され自民党候補と野党候補の一騎打ちの中で勝敗を左右する公明党から国民全員を対象にした一律10万円支給に変更しないと自民党候補を応援できないと迫られたためと思われます。これは一種の脅迫であり、これに屈したことは安倍首相のプライドをズタズタにしたと思われます。そしてこれが今回安倍首相の持病を悪化させる原因となった最大の出来事だと考えられます。

これで分かるように3月から4月にかけてのコロナ対策の過程で安倍首相がしたことは悉く否定され、プライドはズタズタになっていました。それに追い打ちを駆けたのが5月の国会での検察庁法改正案に対する国民の反発でした。これは政府が安倍政権への貢献度が高い黒川東京高検検事長を検事総長にするため、検察庁法で63歳となっている検事長の定年を解釈で変更・延長し、その辻褄合わせの為検察庁法を改正しようとしたことに反発した人たちが、「#検査庁法改正案に抗議します」とツイートし、その数が数日で500万件以上となった事件でした。それでも安倍首相は採決を強行しようとしましたが、当の黒川検事長がコロナ自粛中に新聞記者と賭けマージャンを行っていたことが報道され、成立を断念しました。黒川検事長の定年延長は安倍首相の提案ではなく安倍首相は積極的ではなかったと思われますが、世間では安倍首相が悪者にされたため、安倍首相にとってこれも大きな傷となったと思われます。その後国会が閉会した6月8日には、安倍首相が首相補佐官や総裁特別補佐として重用し昨年9月の内閣改造では法務大臣に任命した河井克行衆議院議員と昨年7月の補選で安倍首相が積極的に支援し当選したその妻の案里参議院議員が公職選挙法違反(買収)の容疑で逮捕されました。これはこれまで安倍首相側近は逮捕されないと言う神話が崩れたことを表し、安倍首相周辺も安全ではなくなったことを意味します。安倍首相自身もこれまで加計や森友学園、桜を見る会などに関して疑惑を指摘されており、自身も安全ではなくなったと感じて来ていたと思われます。

こういう状況の中で8月28日安倍首相は辞任を表明しました。これまでいくつもの疑惑や困難を首相の権力で払い除けて来たけれど、コロナという怪物にはこの権力が全く通じませんでした。その結果安倍首相の無力さを際立たせ安倍首相のプライドはズタズタとなり、これが安倍首相の持病を悪化させたものと思われます。

安倍首相は肉体的にはコロナに感染していませんが、精神的には感染していたものと思われます。