定昇を業績評価で決めるのなら、日々の業績を記録するシステムが必要
トヨタが定期昇給(定昇)も業績評価に基づいて行うと発表したという報道です。この場合、これまでのように全社員一律何%の昇給とはならず、各社員の前年の業績に基づいて今年の昇給額が決まることになります。その場合、昇給しない人も出て来ることになり、同じ資格の中で給与格差が付くことになります。
業績が売上や利益などで測れる業種においては、獲得した売上や利益に応じて報酬が決まる会社が増えていますが、トヨタのようなメーカーでは、製造や開発現場のように多くの社員が力を合わせて1つの製品を開発したり製造したりしているため、個々の社員の業績は測りずらいのが実情です。そのため、定昇は全員一律として来ており、それなりに合理性はあると思われます。これを同じ仕事をしている社員間で業績に基づいて定昇に差を付けるとなると、業績評価方法が問われてきます。
私はメーカーにもいたことがありますが、その頃は毎年4月に様式の決まった年間業務計画書が配られ、まず自分が作成し、その後上司と話合い修正を加え完成し提出していました。業務計画書の様式も最初は大雑把だったのがだんだん具体的に書くようになり、そして数値目標が増えたように記憶しています。それでもメーカーの場合、まじめに取り組んでいるかとか、協調性はあるかとか、遅刻や無断欠勤はないかとかいうような人物評価に関わるポイントが高い割合になっていました。その業務計画書は一旦提出すると、夏と冬の賞与支給前に戻され、それまでの実績を書き上司に上げ、全体の調整を経て賞与の支給ランクと支給額が決まっていたように覚えています。その後私は、金融関係の仕事に転職しましたので、年俸制の業績評価一本に移行しました。
メーカーの業績評価の場合特にそうですが、上司が部下の業績評価を行うのは、夏や冬の賞与支給時期の前だけであり、それも1日か2日の限られた時間だけです。中には休日に自宅で行っている上司もいると思います。これから定昇も含めて業績評価の比重が高くなると、業績評価の精度を高める必要があると思われます。最終的な業績評価は、各社員の日々の、またはポイントを上げた日の業績の累積ポイントとなるはずですが、現在のように賞与の前に業績評価をしていたら、記憶に頼ることになり正確な業績評価にはなりません。
例えばプロ野球やプロサッカー、プロバスケットの選手の場合、日々の試合でのポイント、貢献度が記録され、それがエビデンスとなって業績が評価されます。メーカー社員の場合、それだけ分かりやすいポイント制は敷けないと思いますが、これを真似たポイント制度を作り、ポイントに該当する行為があったら、または結果が出たら、その都度ポイントを記録する必要があると思います。そうすれば最終業績評価は、日々の業績評価の結果であり、公平な評価に近づくと思われます。
トヨタが行おうとしている個々の社員の業績に基づく定昇や賃金の決定は、当然の流れではありますが、これが会社にとっても社員にとっても良い制度となるためには、業績を日々記録する制度の整備が欠かせないと思われます。