日本の政治の中心は長州から神奈川へ

安倍首相は長州出身の8人目の首相ということで、山口県人は鼻高々のようです。これも中身を見ると4人は軍人(山形有朋、桂太郎、寺内正毅、田中義一)であり、それ以外は4名です(伊藤博文、岸信介、佐藤栄作、安倍晋三)。長州から8名の首相が誕生したのは、長州が薩摩・肥前・土佐と明治維新の中心となったからでした。そして軍隊を掌握して、他の3藩を排除し、長州出身者の軍人で政権をたらい回しにしました。岸、佐藤の両首相もこの歴史があって誕生したものです。従って、長州人が個人的に優秀だからではありません。しかし、岸首相は官僚時代にも東条英機首相に辞任を勧告するなど硬骨漢であり、1960年には多くの学生や労働者の反対デモに会いながら、日米安全保障条約の改定を実現しています。またその弟の佐藤首相は、1972年に沖縄の日本復帰を実現しています。これは北方領土返還交渉の困難さを見れば如何に大事業だったかが分かります。このように岸首相と佐藤首相は偉大な首相であったと言えます。

一方安倍首相はどうでしょうか?岸首相および佐藤首相が山口で生まれ育った紛れもない長州出身者だったとすれば、安倍首相は父親の衆議院議員安倍晋太郎氏と岸首相の娘であるその妻との間に東京で生まれ一貫して成蹊学園に学んだ生粋の東京人です。選挙区は山口と言えど長州人とは言えず、他の7人の長州出身首相とは異なると思われます。また首相在職期間は佐藤首相を抜いて日本一になったようですが、この間に後世に残る政治遺産は何もありません。むしろ安倍首相個人の周辺で醜聞や事件が多発し、こちらの記憶を残すこととなっています。だから厳しく言えば、岸首相や佐藤首相と安倍首相は比較の対象にはならないレベルと言えると思います。

そして安倍首相の後の首相に菅官房長官がなることによって、政治の中心は長州から神奈川に移ることになると思われます。安倍首相の前には神奈川出身の小泉首相が誕生しており、菅首相となれば小泉首相に続く2人目の神奈川出身の首相となります。小泉首相は郵政民営化を掲げ、反対者が多い自民党をぶっ壊して政権を維持しました。そして5年の任期中に郵政、道路公団、政府系金融機関の民営化を実現しています。たぶん任期中に一番多くの改革を実現した首相であると思われます。これは日本最長の首相任期7年8カ月の間に何の改革の実績もない安倍首相と対照的です。これは小泉首相が政党人としての視点から政治(政党人型政治)を行ったのに対し、安倍首相は取り巻きの官僚依存的な政治を行なったからです。そのため官僚独特のやっている感を出すだけの政治で終わっているのです。この官僚依存型の政治が長州出身首相の特徴であると思われます。4名の軍人出身の首相は除き、伊藤博文、岸首相、佐藤首相は官僚出身であり、その政治は官僚型の政治でした。それに対して小泉首相がそうであったように、菅首相も政党人型政治を行うと考えられます。それは菅首相が政治家秘書や横浜市議などを経て国会議員となっており、官僚よりも有権者の方を向いているからです。そして菅首相の後は同じ神奈川出身の河野太郎衆議院議員が首相に就任することが有望視されています。この流れを見ると、政治の中心は長州から神奈川に移ったとように思われます。