携帯電波使用料は営業利益率5%を超える額にすればよい

菅首相は本気で携帯料金の4割値下げを実現するようです。当たり前です。携帯3社は国民の財産である電波を使って家計から年間約14兆円も収奪しているのですから。営業利益は約3兆円で、利益率は約20%に達します。同じ公益事業であるある電力の営業利益率は約5%です。如何に携帯3社が収奪の限りを尽くしているかが分かります。そしてこの利益は、例えばソフトバンクグループ(SBG)では巨額のM&Aや投資資金として海外に流出しました。家計の資金が携帯電話料金で吸い上げられ、海外に流出していたのです。賢いSBGの孫社長は、菅官房長官が「携帯電話料金は4割値下げする余地がある」と発言すると、携帯電話事業を行うソフトバンクを株式公開し、約2兆4,000億円を手にしました。この9月にはソフトバンク株式約22%売却し、約1兆2,400億円を手にします。孫社長は、今後携帯料金は下がり、携帯電話事業は美味しい商売ではなくなると判断したようです。

菅官房長官が「4割下げられる」と発言してから2年経ちましたが、携帯3社の売上高は約12兆円から約14兆円に増加しています。逆に収奪を強化しているのです。この間総務省は値下げ策としていくつかの対策を実施しましたが、いずれも効果がなく、逆に収奪強化の結果となっています。これは、総務省の担当官僚に値下げさせる意思がなく、業界関係者で構成する有識者会議を隠れ蓑として、携帯3社と連携しているからです。

昨年9月の内閣改造で高市総務大臣が就任し、日本通信から出された通話卸料金値下げの大臣裁定申請を認めましたので、今度格安スマホでは値下げが進むと思われますが、4割値下げには程遠い状態です。菅首相は、高市総務大臣は頑張っていると認めていたと思いますが、このままでは時間が掛かり過ぎると判断して、大臣交代に踏み切ったと思われます。

今後は菅首相の指揮の下武田総務大臣が4割値下げの実現に当たることになります。菅・武田コンビは、福岡知事選で現職の小川知事を下ろしに来た麻生現財務大臣と自民党福岡県連を敵に回し、小川知事を応援し勝利に導きました。だから戦闘力は実証済みです。

しかし、具体的な値下げの決め手があるわけではないと思われます。そこで最終兵器として考えられているのが菅首相が口にした電波使用料の値上げです。携帯3社は国民から約14兆円も搾取しておきながら、その電波の使用料は年間約450億円に過ぎません。こんなべらぼうに安い対価はありません。従って、これの引上げは当たり前のことです。これまで行われなかったのは総務省が携帯3社の庇護者となっていたからです。このことは、総務省で通信行政を担当してきた桜井元事務次官が現在電池グループ副社長に収まっていることからも分かります。電通は携帯3社の広告部とも言える存在であり、3社のまとめ役でもあることから、ぴったりの天下り先なのです。これだけ職務を背景とした露骨な天下りはこれまで例がないと思います。

電波使用料を引上げれば、携帯3社はその分料金に上乗せするから、料金が上がるのではないかという声がありますが、違います。携帯3社の5%を超える営業利益全額を電波使用料として国に吸い上げればよいのです。例えば、売上高が14兆円、営業利益3兆円とすると、5%の営業利益は7,000億円(14兆円×0.05)ですから、これを超える2兆3,000億円が電波使用料となります。これでは値上げして利益を上げても意味がありません。電波使用料の引上げは、国の歳入を増やす手段でもあります。増税をするより遥かに容易です。

菅官房長官の言う4割値下げは、携帯3社の営業利益(約3兆円)が4割(約1兆2,000億円)下がることではありません。売上高(約14兆円)が4割(5兆6,000億円)下がることです。この金額は、消費税2%に相当します。即ち、携帯料金の4割値下げが実現すれば、消費税2%引き下げたことと同じ効果が出せるのです。これが菅首相が携帯料金4割値下げに拘る理由です。この結果、携帯3社はやって行けないのではと思うかも知れませんが、そんなことはありません。携帯3社の利益は、代理店費用や広告費をふんだんに使った上でのものであり、これらを正常に戻せば、5,6兆円の営業利益となります。従って、4割値下げ後でも営業利益は5%程度出せます。